2017 Fiscal Year Research-status Report
認知症高齢者の見当識障害のメカニズムとアセスメントに関する心理学的研究
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17K04406
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
松田 修 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (60282787)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 見当識 / 見当識障害 / 認知症 / アセスメント / 生活障害 / BPSD / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、見当識障害に関連する国内外の文献や、研究代表者のこれまでの臨床実践をもとに、主に以下の二点を検討した。 第一は、見当識障害の概念およびメカニズムに関する文献検討で、見当識障害がなぜ起こるのかについて認知機能との関連から検討した。その結果、見当識が保たれているためには、注意や記憶などの認知機能が十分に機能していることが必要であるが、見当識障害と認知機能との関連の詳細については未だ十分に明らかになっていないことが示唆された。特に、認知機能のどの領域が見当識障害の出現と深く関わるのか、また、一般に見当識は時間、場所、人物(他者、自分)に分類されるが、障害のメカニズムはどの分類でも全て同じなのかどうか、などの点はよくわかっていないようである。次年度以降はこれらの点についてさらに詳しく検討してみたい。 第二は、見当識障害と生活障害およびBPSDとの関連について、認知リハビリテーションを中心に研究代表者が取り組んできた非薬物的アプローチの実践をもとに検討した。その結果、時間見当識をサポートする外的補助手段の活用は、生活障害の改善やBPSDの治療・予防に一定の効果をもたらす可能性が示唆された。この点から、見当識障害が生活障害やBPSDの出現に重要な影響を与えている可能性が確認された。また、どのような手がかりがあれば見当識障害をサポートできるのかを判断可能なアセスメント、すなわち、支援につながるアセスメントの必要性も示唆された。これらの点については平成29年11月24日~26日に開催された第36回日本認知症学会学術集会のシンポジウムで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
見当識障害のメカニズムやアセスメントに関する研究の現状や課題を明らかにでき、次年度以降に取り組むべき具体的な目標を示すことができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
認知症外来受診患者の心理検査データを統計学的に解析し、見当識と認知機能との関連を定量的に検討する予定である。そこで得られた結果をもとに、見当識障害のメカニズムに関する仮説モデルを提示したい。また、支援につながるアセスメントはどうあるべきかについても検討したい。
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Causes of Carryover |
本年度は文献検討や臨床実践の振り返りを中心に行った。そのため、データ入力・分析などに関わる人件費や謝金として助成金を使用しなかった。また、初年度ということもあり、論文投稿をすることができず、そのために必要な支出に助成金を使用することもなかった。これらの点が、次年度使用額が生じた主な理由であると考えられる。 次年度はデータの統計解析を伴う研究を行う予定であり、そのために必要な人件費や謝金、研究成果の発表、さらには関連する物品の購入などの支出に助成金を使用させていただきたいと考えている。
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