2018 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化する大学における学生のメンタルヘルス促進を目指した予測的研究
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17K04410
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
佐々木 恵 北陸先端科学技術大学院大学, 保健管理センター, 准教授 (10416183)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メンタルヘルス / 大学生 / 肯定的未来志向の育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,ストレッサーとレジリエンスを変数として含む調査を行い,平成29年度のデータと連結することで,大学生の1年後のストレス度を予測可能な変数を明らかにすること(研究目的1),これまでの調査結果をもとに,学生支援プログラムの作成・試行を行うことであった(研究目的2)。 研究目的1については,2017年4月(Time 1)に入学した正規学生の定期健診データを,2018年4月(Time 2)時のデータと連結して分析した。Time 1の諸変数からTime 2のストレス度の高さを予測するロジスティック回帰分析では,留学生は日本人学生の2.66倍,肯定的未来志向のスコア高群は低群の0.31倍,ストレス度スコア高群は低群の4.89倍,Time 2でのストレス度スコア高群になる可能性を持つという結果となった。 また,唾液中バイオマーカーを用いた検討では,唾液試料の提供を申し出た学生が17名(日本人学生14名・留学生3名)と当初の予定(60名)よりもはるかに少なかった。このサンプル数では質問紙調査と合わせて国籍を変数とした検討を行うには不充分であるため,2019年4~5月にデータ収集を行った後で詳細な解析を行い最終結論を出すこととした。 研究目的2については,これまでレジリエンスの「肯定的未来志向」を高めることが,日本人学生・留学生ともにメンタルヘルスの促進に重要であることが示されているため,これに相当する学生支援プログラムを吟味した。大学生という学業が本分の対象者を想定して国内外の文献を精査したところ,「先延ばし行動(procrastination)」を変容させていくことによって,学業パフォーマンスが改善され成功体験を得,未来に対して肯定的に考えられるようになることが示唆された。 今後はこれらの知見をもとに学生支援プログラムの効果を検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大学生のストレス度を予測する要因については,これまでの横断的・縦断的研究で「肯定的未来志向」の育成が日本人学生・留学生ともに重要であることが示唆されている。より客観的な知見を得るために唾液中バイオマーカーを用いて検討することが本研究の目的の一部となっているが,この点に関しては研究協力者が想定の数を確保できていないため,2019年4~5月のデータ収集分と併せて検討する必要性が生じている。 一方で学生支援のプログラムの検討については,当初の計画とされていた介入の実施・効果の検証には至っていない。しかしながら,有用なプログラム内容を検討するにあたり,先延ばし行動(procrastination)の変容プログラムの先駆的研究を行っている,スウェーデン・カロリンスカ研究所のAlexander Rozental氏との共同研究体制を構築することができた。先延ばし行動の変容によって,大学生の学業パフォーマンスを促進し,結果としてメンタルヘルスを向上させることが期待される。現在,Rozental氏との意見交換を重ねながら,これまでの本研究課題の知見を踏まえて日本で学ぶ学生に適用できるプログラムの検討が進んでいるところである。 これらの状況を総合すると,一定の成果と今後の見通しがついているものの,平成30年度の進捗としては「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究計画は,大学生のストレスの規定要因について,これまでの知見の再現性を確認すること,バイオマーカーを用いての検討を含む調査を完結させること,これまでの研究知見をもとにした学生支援プログラムを実施し効果検証を行うことである。カロリンスカ研究所のAlexander Ronzental氏には研究協力者として参加して頂くことになり,より良い学生支援プログラムの開発を目指す予定である。また,これまで得られた知見の研究成果の公表を次年度も継続し,国内外の学術学会ならびに学術雑誌での成果発表を進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度に予定していた唾液中バイオマーカーを用いた検討は,研究協力者が想定よりも大幅に少なかったため,バイオマーカーの測定(業者委託)に係る費用の支出が少なくなった。次年度においてもバイオマーカーの測定を行うため,費用を次年度に繰り越すこととなった。 また,学生支援プログラムを開発・効果検証を行うにあたり,科研費研究員(1名・週1日勤務)を雇用することとなったため,これまでの人件費・謝金の残額を次年度に繰り越し,雇用費用としてあてることとした。 物品費とその他の経費もそれぞれ次年度に繰り越し分があるが,これまでの研究関連資料を管理するための施錠可能な保管庫の購入や,研究成果発表に係る費用(学術論文投稿費,学会参加費)で支出する予定である。
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Research Products
(4 results)