2019 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化する大学における学生のメンタルヘルス促進を目指した予測的研究
Project/Area Number |
17K04410
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
佐々木 恵 北陸先端科学技術大学院大学, 保健管理センター, 准教授 (10416183)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | グローバル / 大学生 / メンタルヘルス / 予測的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は,日本人学生・留学生のメンタルヘルスを予測する要因について,横断的データにおいてこれまでの知見が再現されるか確認しつつ,平成30年度の新入生については平成31年4月データと連結し,縦断的データから知見を得ることが目的であった。 唾液中バイオマーカーを用いた検討では,平成30年度に唾液試料の提供を申し出た学生が17名(日本人学生14名・留学生3名),さらなる追加が期待された令和元年度では4名(このうち3名は平成31年度にも協力)にとどまり,当初の予定よりもはるかに少なかった。唾液中バイオマーカーについては縦断的な検討が困難であるため,本研究課題においては平成31年度に収集したデータに基づいて横断的検討を行うこととなった。 一方で質問紙調査については予定どおり実施され,まず平成31年4月調査における横断データからは,日本人学生・留学生のいずれにおいても,レジリエンスの「肯定的な未来志向」のスコアが高いほど精神症状のスコアが低いことが示された。さらに,平成30年4月データと平成31年4月データを連結させた縦断的検討においては,2時点間の「肯定的な未来志向」の増加が精神症状スコアの低減をもたらす方向性(階層的重回帰分析におけるβ=-.17, p=.11)は示されたが,統計学的な有意性を認めるには至らなかった。 これらの結果から,明確な結論が得られていない部分が一部存在するが,おおむね,レジリエンスにおける「肯定的な未来志向」を高めることが大学生のメンタルヘルスの促進に有用であることが示唆された。文献レビューの結果,「肯定的な未来志向」を高める方策として「先延ばし行動(procrastination)」の改善が高等教育現場のニーズに合致するかたちで存在することが示唆されたため,この点に焦点を絞った介入プログラムの構築を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度において当初の見込みよりも大幅に本務の業務量が増加し学術学会における成果発表および論文投稿に遅延が生じたため,令和2年度への研究補助事業期間延長を行った。調査研究に関わるところでは,32nd International Congress of Psychology(チェコ共和国)でのポスター発表が採択されている(新型コロナウイルスの感染拡大にともない,学会自体は令和3年度に延期)。また介入プログラムについては,全学的な効果検証には至っていないものの,これまでの研究知見を活用した,先延ばし行動の改善に焦点を当てた介入プログラムを試行しその原型が整っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は本務の学生相談業務に急激な追加負荷がかかりデータ解析と成果発表に遅延が生じたため,1年間の研究期間延長を申請させて頂いた。昨今の新型コロナウイルスの感染拡大にともない,令和2年度中の学術総会については開催の見通しが立たない状況であるが,論文投稿を主軸として成果発表を継続する予定である。 また,大学生のメンタルヘルスを促進するための介入効果検証については,学内における全学的検討には至っていないものの,令和元年度にスウェーデン・カロリンスカ研究所のDr.Rozentalとの共同研究体制を構築することができ,本研究課題で得られた知見を活かした,大学生の先延ばし行動の改善に焦点を当てたプログラムの原型が整ったところである。こちらについては,さらに系統立てたプログラムにブラッシュアップした上で,今後の研究課題として発展させていく予定である。
|
Causes of Carryover |
本研究課題は当初平成31年(令和元年)度で終了予定であったが,本務の業務量の急増に伴い,主として研究成果発表に遅れが生じていたため,令和2年度までの研究期間の延長を行うこととした。令和2年度においては既に採択されている演題も含めた学術学会での成果発表と,英文学術論文を中心に論文投稿に係る費用として残額を使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)