2018 Fiscal Year Research-status Report
レジリエンスの涵養と生活史の再編を視座とする回想ドラマ療法の開発
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17K04422
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古賀 聡 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (00631269)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 回想 / ドラマ / 心理劇 / 集団心理療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題は、集団心理療法の心理劇をもとに、過去の回想に焦点をあてた回想ドラマ療法の開発である。そして、その回想ドラマ療法の目的は、即興劇への参加による自発性や創造性の発揮であり、それはレジリエンス(精神的柔軟性・回復性)の涵養につながると考えられる。また、レジリエンスの涵養は抑うつや不安の問題の根底にある執着性や思考の頑なさを和らげる働きがあり、心理的葛藤の根底になる自身の生活史についての否定的なとらえ方を、肯定的で、建設的な方向へ修正する作用があると考えている。 1.大学生を対象として自身の傷つき体験(裏切られた体験)へのとらえ方がどのように変容するかについて回想イメージを用いて検討した。アタッチメント特性との関連から分析を行った(朝木・古川・志方・古賀,2019)。また、進路進学における親子間葛藤について、ロールプレイングを用いて親子の対話場面を再現し、それらの感想を質的データとして分析した(白濵・榊原・古川・古賀,2019)。 2.回想ドラマ療法の評価方法の開発として、対人イメージ図による心理的距離の変化の測定を試みた。これまで、心理療法の効果としては質問紙法によるものが多いが、投影法的手法を用いた評価方法の開発は今後の回想ドラマ療法の展開に寄与すると考えられる(岩男・古賀;2019)。 3.回想ドラマ療法の臨床実践について発表した。統合失調症など重度の精神疾患を抱える患者と看護者の関係を支援するための回想ドラマの実践(榊原・古賀,2019)、認知症者を対象とした回想法グループに回想ドラマ療法の手法を導入した実践(金子・古賀,2019)、思春期の発達障害者への実践(安武・岩男・金子・古賀,2019)、対人援助職の教育課程のなかで回想ドラマ療法を用いて事例検討を行う実践(古川・古賀、2019)など、臨床実践や教育実践における回想ドラマ療法の有効性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大学生を対象とした実証研究の実施と学術論文としての発表、さらには臨床実践や教育実践の学会発表をおこなった。次年度は臨床実践や教育実践の成果を学術論文で発表し、研究で得られた知見を公開することが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床実践や教育実践の成果を学術論文に投稿し、その回想ドラマ療法の意義について明確化し再現性の検証をを行う。さらに、回想ドラマ療法の実施における留意点等を整理し、回想ドラマ療法の実施マニュアルを作成する。
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Research Products
(8 results)