2018 Fiscal Year Research-status Report
A research on a stress-mitigation effect of playful experiences and its psycho-biological background.
Project/Area Number |
17K04436
|
Research Institution | Sapporo International University |
Principal Investigator |
橋本 久美 札幌国際大学, 人文学部, 教授 (30438410)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜上 尚也 北海道医療大学, 薬学部, 准教授 (70221504)
中野 茂 札幌国際大学, 人文学部, 教授 (90183516)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 成人性遊戯性尺度(JPS) / 面白さ傾向 / 遊び経験 / ストレス緩和効果 / ストレス抑制効果 / 唾液中DOPAC / POMS / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、質問紙を用いて遊び経験と不安傾向、レジリエンスとの関係性を検討することを目的とした。さらに、遊び経験が負の情動を緩和/抑制するかを実験的手法によって検討した。研究Ⅰでは、昨年度作成した成人用遊戯性尺度(JPS)の4因子は、すべてレジリエンス(RS)との正の関連が認められた。特に遊び経験の豊かさ因子は、極めて強い関連を示した。面白さ志向と遊び経験が不安傾向と、遊び経験は、情緒不安定とも有意な負の関係にあった。尺度間の影響関係モデルを共分散構造分析では、遊び経験は面白さと強い関係にあり「面白いから遊ぶ」という仮説を支持している。遊び経験は面白さ志向を介して不安傾向を緩和・抑制することが示唆される。遊び経験はレジリエントな力を育み、それを介してなまけ(無気力)を抑制していることも見出された。研究Ⅱでは、遊び経験のストレス緩和効果と抑制効果を主観的気分質問紙POMSと唾液中DOPACから検討した。ベースライン(BL)、両課題後のPOMSは、緩和効果実験では失敗経験課題後に負の気分が上昇し、遊び課題後に有意に下降した。抑制実験では遊び課題後に負の気分が下降したが、失敗経験課題後にBL以上に上昇した。従って遊び経験による負の気分の抑制効果は確認されなかった。緩和効果実験では、失敗経験課題直後にDOPAC濃度がBLより上昇したが、遊び課題後は低下したことでストレス緩和効果が認められた。抑制効果実験では、遊び課題直後にDOPACはBLよりも高い値を示したが失敗経験課題直後にBL付近に下降したことで抑制効果が認められる。POMSは主観的気分であり、DOPACは生理的不快感(興奮)である。両者を連動させると、DOPACは遊び課題後に興奮を示しているが、POMSはこれをポジティブ気分としてとらえている。従って、生理的興奮よりも主観的感情が遊び経験の効果を生み出していると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度までの大学生を被験者とした成人性遊戯性尺度の信頼性・妥当性を確認するための研究計画は終了し、ストレス緩和・抑制実験も終了した。幼児を対象とした実験もほぼ終了し十分なデータが得られている。平成30年度の予定としては、幼児を対象とした実験の準備(6月までに札幌国際大学に倫理審査申請を行い承認され、7月までに実験対象児(被験者)の依頼をし、8月までに実験環境の整備と予備実験を行った。さらに本実験として幼児データの収集を行うために、9月までにThe Children’s Playfulness Scale (TCPS; Trevlas et al., 2003) 等の日本語版の作成を終え、12月までに幼稚園における実験でマスデータによる遊戯性×レジリエンスの一般傾向の確認をした。研究協力をしていただいた保護者に、事後のTCPS・幼児レジリエンス尺度(高辻, 2002)、また作成したJPSの幼児版への回答を求めた。現時点で質問紙データはそろっているのでこれから分析をする予定である。ほぼ計画通りの進行である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画の予定通り、遊戯性高低×遊戯行動×ストレス耐性の確認実験を50名程度の幼児を対象に行う(令和1年4月~9月)。仮説である遊戯性の高い児童は低い児童に比べてストレス耐性が高いことを、唾液中生化学物質及び脳波データも用いながら実証する予定である。今後は研究データの分析とまとめ、論文作成と国内外での学会発表を行いながら論点の修正をしていく。研究計画通り、令和1年10月から12月にかけて全体の結果の整理をして最終結果を出す。令和2年1月~3月にまとめた最終結果を学会発表し、成果報告書作成する。論文執筆は並行して作業し、令和1年10月~令和2年3月までの予定でまとめて雑誌投稿をする。
|
Causes of Carryover |
平成30年度までには順調に実験は進み、この年度までの唾液検体の分析は終了した。しかし、次年度追加実験で得られた唾液検体の分析をする予定である。そのため、分析に必要なカラム等の消耗品の費用が残っている。また、昨年度までで発表予定であった一部学会には日程等の事情があり参加できなかった。次年度には助成金を全て使い切る予定である。
|
Research Products
(5 results)