2019 Fiscal Year Annual Research Report
Clarification of cognitive and behavioral bases of biased retelling with focusing on memory characteristics.
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17K04439
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
池田 和浩 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (40560587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西浦 和樹 宮城学院女子大学, 教育学部, 教授 (40331863)
佐藤 拓 明星大学, 心理学部, 准教授 (10577828)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自伝的記憶 / 転換的語り直し / 自己欺瞞特性 / 抑うつ / 自己開示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、転換的語り直しと記憶の概括化との関連性を明らかにすること、および、転換的語り直しから生み出される心理・行動的波及効果を検証することを目的としている。2019年度は、認知転換方略の背景に存在する認知特性を明らかにするために、(1)記憶の語り直し方略と大学生の自己開示の深さの関係、(2)語り直し方略と自己制御特性の関係、(3)語り直し方略と精神健康の関係の3点を検証した。 167名の参加者は、記憶の語り直しの3方略の特性を評定するために語り直し特性尺度に評定した。また、精神健康度および自己開示の程度、自己制御特性を測定するため、参加者は、ツァン自己評価式抑うつ性尺度、自己開示の深さを測定する尺度、バランス型社会的望ましさ反応尺度、セルフコントロール尺度短縮版に回答した。 その結果、ネガティブ感情抑制およびポジティブ感情拡張方略では、自己開示の深さにかかわりなく、制御方略の使用頻度と開示量が正の相関関係にあった。一方、認知特性方略の使用頻度の高さは、最も深いレベルの自己開示と無相関であり、抑うつ傾向と負の相関関係にあった。また、セルフコントロール能力は、ポジティブ感情拡張および認知特性とは関連しなかった。一方で、ネガティブ感情抑制方略の使用頻度の高さはセルフコントロール能力の低さと関連していた。また、自分の決定や判断などを自らの自己像であると信じて無意識的に社会的に望ましい回答を見せる傾向である「自己欺瞞特性」は、認知転換方略の使用頻度と正の相関関係にあった。一方で、真実の自己を偽って見せかけの回答を行う傾向である「印象操作」は、いずれの語り直し方略と関連していなかった。 これらの結果から、(1)自己欺瞞特性が高い人ほど、認知転換を用いやすいこと、(2)認知転換を用いやすいものが、開示すべき水準を正確に判断できる豊富な認知的資源を有する可能性が推察される。
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