2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04441
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
齋藤 梓 目白大学, 人間学部, 専任講師 (60612108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 かおり 清泉女学院大学, 人間学部, 准教授 (20736425)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 性暴力被害 / 援助要請行動 / 被害者支援 / 被害認識 / 被害者心理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、一つには、平成29年度に実施した性犯罪・性暴力被害に関するオンライン調査の結果の分析を行った。この調査は、リサーチ会社を使用し、男女3000人に対し、被害経験、被害類型ごとの精神的影響の違い、被害後の援助要請行動について尋ねた調査である。分析の結果、女性の場合には、レイプ被害ではない性被害であり、暴行脅迫があり、恐怖が強く、しかし被害時に硬直状態(Tonic immobility)を呈していない場合、被害後の援助要請行動がとられる可能性が高かった。男性の場合には、暴行脅迫がある場合、援助要請行動がとられる可能性が高かった。2017年の刑法改正により、性犯罪における性別の記載が撤廃され、今後は女性のみならず男性の性犯罪被害の支援も重要となる。本研究は、性被害の暗数化を防ぎ援助要請行動を高めるための知見を得られたこと、特に男性被害に関する知見を得られたことに、大きな意義があったと考えられる。今後、分析をさらに進める予定である。 二つ目の研究は、性暴力被害当事者へのインタビュー調査である。オックスフォード大学および東京大学の研究者にも協力を得て、31名の当事者にインタビュー調査を実施し、さらに20名の当事者から体験談の記載を得た。調査の結果、性暴力被害が発生するプロセスや、性暴力被害が人生にもたらす影響、被害後の援助要請行動の促進・阻害要因が明らかになった。また、当事者は、自分の身に起きたことを被害だと認識するまでに時間がかかることが分かった。被害後の援助要請行動を促進するためには、社会の性暴力被害のイメージを変化させ、被害を受けた人が自分の体験を被害だと認識できるようにすることが重要である。法律や社会と性暴力被害当事者の実感の乖離が指摘される現在、この調査により当事者の視点からの性暴力被害の問題が明らかになったことは、非常に重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、①性被害後の援助要請行動を促進及び阻害する心理社会環境要因の解明を行い、援助要請行動を促進する制度やシステムを検討すること、②性被害時の抵抗や逃走を妨げる要因、心理状態の解明を行い、被害者が被害後に受ける二次被害の緩和を目指すことである。その目的に鑑み、平成30年度は、オンライン調査と質的調査を進めた。 ①については、オンライン調査の結果から、被害の深刻さや被害時の強直性不動状態が援助要請行動を阻害することが明らかになった。また質的調査からは、そもそも体験を被害と認識できないこと、自責感が強いことが援助要請行動を阻害することが明らかになった。調査結果は学会発表や大学の紀要等で順次発表しており、平成31年度には解析をさらに進め、学会誌への投稿を行う予定である。 ②については、オンライン調査の結果からは被害時に強直性不動状態が生じていることが明らかになり、質的調査からは、加害者が被害時に会話等で作り出す上下関係や、もともと加害者との間に存在していた上下関係が被害者の抵抗を妨げることが明らかになった。これは、「暴行脅迫が無かったのだから同意したのではないか」といった二次被害を抑制するために重要な知見である。 平成30年度の計画では、それぞれの調査の実施及び学会発表を目標としており、それは達成された。また、紀要への掲載も完了している。平成31年度は、学会発表、研究成果報告シンポジウムの開催、学会誌への投稿を行い、研究で得られた知見をさらに広めていくことを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究成果は、被害者が援助要請しやすい社会環境となるよう、社会に還元することが重要である。従って平成31年度は、オンライン調査および質的調査で得られたデータの解析をさらに進め、学会発表、学会誌への論文投稿、研究結果報告シンポジウムの開催、インターネット上での研究成果の公表を行っていく。 いずれの発表、公表も、回答者が特定されないよう十分に注意を払う。
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Causes of Carryover |
次年度は最終年度として、分析の結果不足していると考えられるデータの補強(主に追加のインタビュー調査)、研究成果を発表するシンポジウムイベントの開催、論文投稿を実施する。そのため、次年度使用額を生じさせた。 追加でインタビューを行う際には、その謝金およびテープ起こし委託費が必要になる。また、研究成果公表の際には、本研究成果を社会に還元するために、法律の専門家にも登壇いただきパネルディスカッションを行う予定である。質的調査のスーパーヴァイズを担当した英国の研究者にも来日いただく予定であり、それぞれの登壇者に対する謝金、および英国から日本の交通費が必要となる。また、論文投稿の際にも、国際学会誌への投稿には投稿料がかかる場合があり、その使用も検討している。
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Remarks |
英国(イギリス)のDaiwa Foundatoinにて、日本の性暴力被害当事者の団体である一般社団法人Springが主催で開催された「同意がないセックスでもレイプにならない、日本の刑法を変えたい!」に招待を受け、「日本の女性にとっての性交「同意」とは?」というタイトルで研究成果発表を行った。
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Research Products
(9 results)