2017 Fiscal Year Research-status Report
先天性心疾患患者のキャリア発達モデルと就労支援ツールの開発
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17K04460
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
榎本 淳子 東洋大学, 文学部, 教授 (50408952)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 先天性心疾患 / 社会的自立 / キャリア発達 / 就労支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療技術の発展により先天性心疾患患者の多くが成人期に達することが可能となり、小児期から成人期へのスムーズな移行が課題となっている。本研究は、このような状況を背景に、成人期に達した先天性心疾患患者の社会的自立に関して、患者のキャリア発達の提示、就労支援ツールの開発を目的に展開している。本年度は、調査1:国際調査から得られる先天性心疾患患者の就労を促進/妨害する要因の検討、調査2:日本国外における社会的自立に向けた支援システム、支援ツールに関する情報収集をすることが目的であった。 調査1に関しては、すでに実施済みの調査データを用いて、特に日本の患者の就労状況と就労を促進/妨害する要因を精査した。その結果、日本の患者では男女とも非就業者の割合(男性14.6%;女性12.5%)が同じ年齢群の国民標準値(男性5%;女性2.9%)と比較して有意に高く、男性においては常勤就業者の割合が有意に低いことが分かった(患者群74.2%;標準値85.6%)。またその背景要因として、男性では年齢が若いこと、女性では疾患が重症であることが関連していた。これらの結果については、29年度の国際学会において発表し、現在論文にまとめているところである。 また、調査データの海外の結果を分析するとベルギー、スイスなどが比較的高い割合で就業していることが示されていた。先行研究を概観すると、先天性心疾患患者の就労について、オランダやフィンランドで就業率が高いことが示されていた。 調査2に関しては、本年度2回にわたり海外で開催された関連学会に参加し情報収集に努めたほか、国際調査に参加した施設からも使用されている支援システム、支援ツールについて問うた。しかし、就労に特化した支援や支援ツールについては見当たらなかった。そのため新たに作成する意義があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的であった調査1:国際調査から得られる先天性心疾患患者の就労を促進/妨害する要因の検討、調査2:日本国外における社会的自立に向けた支援システム、支援ツールに関する情報収集をすることについて、本年度おおむね予定通りに進展することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在関係機関の倫理審査委員会を承認を得て、調査4:成人患者に対する面接調査を実施している。本調査では幅広い年齢層の成人患者に、現在までの発達課題の達成度、疾患との向き合い方、また就労状況(就労している患者に対しては就労形態、就労を継続する上での困難、就労先での配慮など)を具体的に聴取するを目的としており、これらの聴取から患者のキャリア発達モデルを作成する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度までの科研費研究課題を1年間延長したため、本年度は2つの科研費課題が同時進行となった。本年度、延長課題の科研費の方で予算を執行した旅費や備品があり、そのため本課題の予算については次年度使用額が生じてしまった。次年度使用額となった予算については、現在進行中の調査の分析のためのPC購入や分析ソフトの購入に充てていく。
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