2018 Fiscal Year Research-status Report
遺族のニーズに応じた多層的な心理社会的支援の展開と効果の検証
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17K04474
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
坂口 幸弘 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00368416)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 死別 / 悲嘆 / 遺族 / アセスメント / 救急領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」に関して、葬儀社が毎月開催しているサポートグループへの参加遺族のリスクアセスメントを継続的に実施した。参加遺族のリスクアセスメントは、サポートグループの運営スタッフによって、Bereavement Risk Assessment Tool(BRAT)の日本語訳版を用いて、2015年7月より毎月実施してきたが、2018年9月実施をもって調査を完了した。これまで計39回のサポートグループにおいて、延べ478名に関するアセスメントを行い、BRATの評定データを収集した。研究2「多層的な心理社会的支援の実施に向けての現状と課題の把握」については、今年度は救急領域に焦点を当て、全国の救命救急センター289施設の看護管理者を対象に質問紙調査を実施した。151施設より回答があり、有効回答は149施設(有効回答率57.7%)であった。主な結果として、遺族ケアを実施している施設は26施設(17.9%)で、実施内容は専門家の紹介や、冊子の配布などであった。「必要だと思うが、現状として難しい」と回答した施設は69.0%、「必要だと思うし、行うべきである」が24.1%、「必要だと思わない」が3.4%であった。遺族ケアの課題としては、「人員の確保」が83.4%、「スタッフの知識・技術」が63.4%、「多職種連携」が62.1%、「遺族ケアのアセスメント方法」が60.7%、「指導的立場の人材育成」が55.9%、「スタッフの関心・意識」が55.2%、「スタッフの精神的負担」が53.8%、「行政や地域資源の活用」が53.1%、「遺族のニーズの把握」が51.7%、「医師との連携」が44.1%、「遺族ケアの効果の評価」が43.4%、「費用の確保」が41.4%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」については、葬儀社の協力を得て、BRAT日本語訳版による遺族のリスクアセスメントは継続的に実施し、完了することができた。ただ、BRATによる遺族のリスクアセスメントの評定データと、昨年度実施した遺族調査のデータとを照合し、両者の関連性に関する分析によるリスクアセスメントの妥当性の検証作業は現時点では完了していない。研究2「多層的な心理社会的支援の実施に向けての現状と課題の把握」に関しては、文献レビューと救急領域での実態調査は行ったものの、他の領域での調査についてはあまり進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」に関しては、過年度までに収集を完了したアセスメントの評定データおよび遺族調査データの解析作業を進めるとともに、支援者への聞き取り調査を実施し、BRAT日本語訳版による遺族のリスクアセスメントの信頼性や妥当性、ならびに運用方法に関する検討を行う。 また、研究2「多層的な心理社会的支援の実施に向けての現状と課題の把握」に関して、過年度に引き続き文献レビューを進める一方で、救急領域以外での調査を進める。加えて,研究3「さまざまな場での多層的な心理社会的支援の効果の検証」の実施に向けて、協力機関との調整を行っていく。
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Causes of Carryover |
今年度の支出額が当初予定よりも大幅に少なかった主たる理由は、救急領域での調査の規模がさほど大きくなかったため、調査に伴う印刷費や郵送費、謝金等の支出が、当初予算を大きく下回ったことや、他の研究費からも調査費用を支出したことが、大幅な残額が生じた主たる理由である。今年度使用しなかった科研費の使用計画として、医療機関や葬儀社、宗教関係者などを対象とした調査を予定している。また必要に応じて、遺族のニーズに関する調査の実施も検討する。調査方法は質問紙調査もしくは面接調査とし、それに伴う印刷費及び郵送費、研究協力者や協力機関との研究打ち合わせにかかる旅費交通費、謝金等の支出を見込んでいる。加えて研究資料として、死別に関連する書籍等の購入費用が必要である。
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Research Products
(10 results)