2019 Fiscal Year Research-status Report
遺族のニーズに応じた多層的な心理社会的支援の展開と効果の検証
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17K04474
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
坂口 幸弘 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00368416)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 死別 / 悲嘆 / 遺族 / アセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究3「さまざまな場での多層的な心理社会的支援の効果の検証」として、研究代表者が協力している豊中市保健所でのグリーフケア事業の成果について検証を行った。当該事業は、2012年度より、自殺・うつ病対策として実施され、①講演会の実施、②わかちあいの会の開催(年4回)、③リーフレットによる啓発活動を3本柱として、今年度も継続して実施している。2012年度~2018年度の成果をまとめたところ、講演会の開催は9回(うち2回はミニ講座)で、のべ238名が参加し、1回平均は26名であった。男女比は1:7で、平均年齢は62.3歳であった。参加者アンケートの結果、「とてもよかった」「よかった」との回答が93%であり、参加者の満足度が高いことが示された。わかちあいの会に関しては、参加者数は実人数71名(うち男性5名)、延べ人数100名(うち男性5名)であり、平均年齢は63.4歳(38歳~86歳)であった。各回の参加者は2~13名で平均7.1名であった。参加遺族を対象としたアンケート結果によると、41名中25名(61%)において、大うつ病性障害の疑いが認められた。参加遺族の感想として、「ずっと心に抱えていた気持ちを初めて吐露できた」「他の人も同じように悲しみを抱えて生きていることがわかった」「この場でしか話せない大事な場所」などがみられた。リーフレットは研究代表者が監修して作成し、2016年9月から現在までに約60,000部を発行した。豊中市で市民課に死亡届を出した人全員に配布しており、リーフレットを通じて相談につながったケースも散見されている。身近な公的機関である保健所がグリーフケア事業を実施することで、必要としている人が安心して利用できるとともに、事業を通じて把握したうつ病等ハイリスク者に対して継続的な支援ができることの意義は大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」に関しては、葬儀社の協力を得て既にデータ収集を完了しているが、想定以上に解析作業が難航しており、現時点では成果が十分にはまとまっていない。研究2「多層的な心理社会的支援の実施に向けての現状と課題の把握」については、救急医療分野に関して、全国の救命救急センターの救急外来の看護管理者を対象に遺族支援の実態調査を既に実施し、現在は遺族調査の実施に向けて準備を進めているが、協力機関との調整や倫理委員会での審査に時間を要している。また、研究3「さまざまな場での多層的な心理社会的支援の効果の検証」に関しては、豊中市保健所でのグリーフケア事業についての検討は行ったが、他の領域では協力機関との調整がまだ進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」については引き続き、解析作業を鋭意進めていく。研究2「多層的な心理社会的支援の実施に向けての現状と課題の把握」については、救急医療分野での遺族調査の実施に向けて、協力機関との調整を続けていく。また、他の分野での支援活動として、犯罪被害者遺族や、きょうだいを亡くした遺族を対象とした支援の現状や課題についても検討を行う予定である。研究3「さまざまな場での多層的な心理社会的支援の効果の検証」に関しては、豊中市保健所でのグリーフケア事業について継続して検証する。加えて、葬儀社での取り組みや遺族のセルフヘルプグループ、宗教活動、当事者による社会的活動などが、遺族の心理社会的適応に直接的あるいは間接的に及ぼす効果について検証するため、関係機関との調整を行っていく。
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Causes of Carryover |
今年度の支出額が当所の予定よりも大幅に少なかった理由は、当初予定していた救急医療分野での遺族調査が実施できなかったことが大きな要因である。また、豊中市保健所でのグリーフケア事業についても、特に多額の研究費を要するものでなかったことも、残額が多く生じた理由である。今後の使用計画としては、救急医療分野での遺族調査に加え、医療機関や葬儀社、セルフヘルプグループ、宗教関係機関での調査を検討している。調査方法は質問紙調査もしくは面接調査とし、それに伴う印刷費及び郵送費、研究協力者や協力機関との研究打ち合わせにかかる旅費交通費、謝金等の支出を見込んでいる。また研究資料として、死別に関連する書籍等の購入費用が必要である。
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Research Products
(10 results)
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[Book] 喪失学2019
Author(s)
坂口幸弘
Total Pages
224
Publisher
光文社
ISBN
4334044190