2020 Fiscal Year Research-status Report
遺族のニーズに応じた多層的な心理社会的支援の展開と効果の検証
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17K04474
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
坂口 幸弘 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00368416)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 死別 / 悲嘆 / 遺族 / グリーフケア / アセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」に関して、過年度に実施した、①葬儀社のサポートグループへの参加遺族を対象とした質問紙調査と、②同参加遺族に対する運営スタッフによるBereavement Risk Assessment Tool(BRAT)日本語訳版を用いたリスクアセスメントのデータの解析を行った。解析対象は、双方のデータに含まれる遺族30名である。故人に対する続柄は、妻が18名、夫が7名、子が5名で、年齢は43~87歳、平均68.0歳であった。運営スタッフによるアセスメントでは、リスクレベル1(リスクは無い)は16名、2(最小リスク)は7名、3(低リスク)は2名、4(中リスク)は5名、5(高リスク)は0名であった。リスクレベルと、複雑性悲嘆(BGQ)および抑うつ(PHQ)との関係について、有意な関連性が認められ、リスクレベル4の遺族において複雑性悲嘆と抑うつの高リスク者の割合が高かった。遺族自身のBRATによる自己評価では、運営スタッフの評価よりも高いリスクレベルに評定される割合が多かった。第三者によるアセスメントの運用にあたっては、潜在的なリスク要素を十分に把握し切れずに、リスクがやや過小に評価される懸念があり、留意する必要がある。 今年度は、COVID-19の感染拡大の影響で、研究3「さまざまな場での多層的な心理社会的支援の効果の検証」に関連して、研究代表者が協力している豊中市保健所でのグリーフケア事業は計画の中止・変更を余儀なくされ、地域の遺族等を対象としたオンデマンド配信による講演会を2回と、Zoomによる分かち合いの会を1回のみ実施した。講演会は計88名が受講し、例年の対面実施を上回る参加者数であった。両事業とも苦肉の策ではあったが、受講者の満足度は高く、新たな支援の展開につながるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」に関しては、葬儀社のサポートグループで収集したデータの解析をひとまず完了したが、扱い切れていないデータも多く残っている。研究2「多層的な心理社会的支援の実施に向けての現状と課題の把握」については、救急医療分野に関して、全国の救命救急センターの救急外来の看護管理者を対象に遺族支援の実態調査を既に実施し、遺族調査の実施に向けて準備を進め、倫理委員会の承認も得ていたが、COVID-19の感染拡大の影響で、調査協力を予定していた医療機関での調査の実施の見通しが立たず、調査計画を中止することとした。また、研究3「さまざまな場での多層的な心理社会的支援の効果の検証」に関しては、豊中市保健所でのグリーフケア事業についての検証は継続的に行っているが、他の領域では協力機関との調整がまだ進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」については、葬儀社のサポートグループで収集した豊富なデータの解析を引き続き行っていく。研究2「多層的な心理社会的支援の実施に向けての現状と課題の把握」については、救急医療分野に加えて、社会福祉分野に関して、精神保健福祉士を対象に遺族支援の実態調査を行い、現状と課題を明らかにする予定である。研究3「さまざまな場での多層的な心理社会的支援の効果の検証」に関しては、豊中市保健所でのグリーフケア事業について、コロナ禍での新たな取り組みも含めて、引き続き検証する。加えて、葬儀社での取り組みや遺族のセルフヘルプグループ、宗教活動、当事者による社会的活動などが、遺族の心理社会的適応に直接的あるいは間接的に及ぼす効果について、新規の調査データや過年度に収集した資料等をもとに検証する。
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Causes of Carryover |
今年度の支出額が当所の予定よりも大幅に少なかった理由は、当初予定していた救急医療分野での遺族調査が、COVID-19の感染拡大の影響で中止となったことが大きな要因である。また、豊中市保健所でのグリーフケア事業についても、特に多額の研究費を要するものでなかったことも、残額が多く生じた理由である。今後の使用計画としては、遺族支援に関わる関係機関(福祉関係、葬儀社、セルフヘルプグループ、宗教関係など)での調査を検討している。調査方法は質問紙調査もしくは面接調査とし、それに伴う印刷費及び郵送費、研究協力者や協力機関との研究打ち合わせにかかる旅費交通費、謝金等の支出を見込んでいる。また研究資料として、死別に関連する書籍等の購入費用が必要である。
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Research Products
(10 results)