2022 Fiscal Year Research-status Report
遺族のニーズに応じた多層的な心理社会的支援の展開と効果の検証
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17K04474
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
坂口 幸弘 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00368416)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 死別 / 悲嘆 / 遺族 / グリーフケア / アセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究2「多層的な心理 社会的支援の実施に向けての現状と課題の把握」として、ホスピス・緩和医療領域での遺族支援に関する実態調査を実施した。同領域では、過去に2度(2002年、2012年)に実態調査を行っており、前回から10年となる今年度(2022年6~7月)が3度目である。2022年4月1日時点における緩和ケア病棟入院料届出受理施設を対象とし、ホスピス・緩和ケア病棟の看護師長宛てにオンラインでの回答を求めたところ、457施設中222施設から回答が得られた(回収率48.6%)。遺族支援を「行っている」と回答したのは141施設(63.5%) で、「行っているが、コロナウイルス感染症の影響で現在は休止中 」が42施設(18.9%)、「行っていない」が39施設(17.6%)であった。 過年度に比べ、今年度はCOVID-19に伴う研究活動の制約はかなり解消されたが、研究3「さまざまな場での多層的な心理社会的支援の効果の検証」に関連して、研究代表者が協力している豊中市保健所でのグリーフケア事業は、いまだコロナ禍以前の活動状況に戻せていない。コロナ禍前は、地域の遺族等を対象とした対面での講演会や分かち合いの会を3カ月に1回実施してきたが、コロナ禍ではオンラインでの取り組みのみに限定され、ようやく昨年度から対面での活動を少しずつ再開してきた。今年度も昨年度に引き続き、心理教育的な要素を含んだ遺族向け講座のオンデマンド配信に加え、回数や時間を減らす形で対面での講演会と分かち合いの会を実施した。今年度は大阪府下の他市の保健所においても、主に遺族を対象とした同様の講演会を実施した。豊中市保健所でのグリーフケア事業は10年目を迎え、わが国での自治体が主体となったグリーフケア事業の一つのモデルとして、各地に展開されていくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究1「遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の検証」に関しては、葬儀社のサポートグループで収集したデータの解析をひとまず完了しており、データ解析と論文化を進めている。研究2「多層的な心理社会的支援の実施に向けての現状と課題の把握」については、救急医療領域に関しては既に完了しており、昨年度に調査を実施したホスピス・緩和医療領域に関して、データ解析を行っている。また、研究3「さまざまな場での多層的な心理社会的支援の効果の検証」に関しては、豊中市保健所のグリーフケア事業について継続的に実施しているものの、コロナ対応の最前線である保健所での活動であるため、限定的な研究実施に留まらざるを得ない状況もあったが、自治体が主体となったグリーフケア事業の一つのモデルとして、これまでの成果を公表していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、葬儀社のサポートグループやホスピス・緩和医療領域での一連の調査研究で収集した研究データを解析し、論文化するなど研究成果の公表を進めていく。研究3「さまざまな場での多層的な心理社会的支援の効果の検証」に関しては、豊中市保健所でのグリーフケア事業を継続し、その課題や効果を検討していく予定である。加えて、これまでの研究資料をもとに、遺族のニーズに応じた多層的な心理社会的支援のあり方について提言をまとめたい。
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Causes of Carryover |
今年度の支出額が当所の予定よりも大幅に少なかった理由は、ホスピス・緩和医療領域での実態調査を実質的に郵送ではなく、オンラインで実施したことが大きい。依頼状のみの郵送で、調査票と報告書の印刷やそれらの郵送にかかる費用が不要となった。また、 豊中市保健所でのグリーフケア事業についても、特に多額の研究費を要するものでなかったことも、残額が多く生じた理由である。今後の使用計画としては、これまでの研究成果の公表に向けて、研究協力者や協力機関との研究打ち合わせにかかる旅費交通費、謝金等の支出を見込んでいる。また研究資料として、死別に関連する書籍等の購入費用が必要である。
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Research Products
(11 results)