2018 Fiscal Year Research-status Report
常識的見解の功罪をふまえたDV支援活動の啓発-DVに対する一般常識の把握を通して
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17K04479
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
石井 佳世 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (00551128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 宏祐 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (30441950)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DV / 常識的見解 / DV被害者支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度~28年度の科研費助成研究を受け、本研究では、DVに関する世間の常識的見解や地方自治体の啓発活動の実態調査を通して、一般向け及び援助者向けの効果的なDV啓発活動を提案することを目的とする。 これまでの研究からDVサバイバーは援助者のDVに関する常識的な見解に基づく助言により傷つく体験をしていること、DV援助者は常識的見解を伝えることとDV被害者を理解することとの間で葛藤を抱えていることが明らかとなった。 平成30年度はDV被害者に関わった経験を持つ地方自治体職員等8名を対象に、自由記述形式の質問紙調査を行なった。DV支援にかかわった期間は3年~12年であり、全員女性であった。質問項目はDV被害者や加害者に伝えたいことや被害者や加害者が理解しておくべきだと考えること、望ましいDV支援や社会がDVに関して理解すべきであると考えること等である。自由記述で得られた内容を、KJ法を参考にして分析を行った。その結果、 支援者はDV被害者に対して、DVは被害者の責任ではなく、被害者は力をもっているとエンパワメントすることや、DVの構造や社会的背景などについて心理教育をすることが必要だと考えていることが伺えた。また、支援者の常識を押し付けたり、操作的になったりしないように留意している支援者がいることが示された。平成29年度の青年を対象とした調査では、DVの定義については知っている人が多かった一方、DV被害者については「なぜ逃げないのか」「なぜ助けを求めないのか」「なぜ別れないのか」といった【被害者の心情・行動への無理解】が多く見られ、DV支援の専門家との間に乖離が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は「地方自治体職員のDVにまつわる常識的見解についての研究」が実施予定であった。これに関して、質問紙の作成及びデータの収集、質的な分析を終了している。今後、研究結果の発表について検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
各地方自治体のDVに関する資料や研修(行政職向け及び一般向け)について実態調査を進める予定である。質問紙の作成、対象の選定及び回答の依頼を行う。
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Causes of Carryover |
今年度はこれまで蓄積したデータ分析の結果より、予定していた大規模な量的研究ではなく、少人数を対象とした質的研究を行う必要が生じたため、支出が抑えられた。 次年度は今年度以上の規模の調査を行う予定であり、文献収集、論文投稿や学会での発表に係る費用等に使用予定である。
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