2018 Fiscal Year Research-status Report
A Clinical Psychology Research on Influence That Developmental Disorders Give to Trauma(PTSD,CIS,etc)
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17K04480
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Research Institution | Kagoshima Immaculate Heart University |
Principal Investigator |
餅原 尚子 鹿児島純心女子大学, 国際人間学部, 教授 (70352474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久留 一郎 鹿児島純心女子大学, 人間科学研究科, 客員研究員 (40024004)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トラウマ(PTSD,CIS) / 発達障害 / 体験距離 / 体験強度 / ハラスメント / カサンドラ症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)昨年度までに分析した1993年から現在にわたりPTSD症状を呈した被害者等を健常者と発達障害者等(疑いを含む)に分類し、分析した。発達障害を有しPTSD症状を呈した事例(地震、学校への不審者侵入、性被害、虐待、近隣者からの暴行、近所への落雷)を(個人が特定できないよう配慮した上で)、著書「臨床心理学―生きる意味の確立と心理支援―(八千代出版)」に掲載し、出版することができた。 2)新規ケースについて、研究協力機関として県警察本部や犯罪被害者支援センター(理事長:久留一郎、理事:餅原尚子)との連携により心理療法を実施した結果、8事例のうち、1事例は、発達障害が疑われ、上司からハラスメントを受けたケースであった。また、研究代表者が長を務める大学院心理臨床相談センターの外来ケース(産業保健関係のからの紹介)の中にも、発達障害が疑われ、上司からハラスメントを受けていたという事例があった。このケースについては、当相談センター紀要に投稿した。 3)職場で飼育していた猛獣により死亡した事例について、その職員等99名に対し、事故から約1週間後、約1か月後、そして約3か月後にPTSDのスクリーニング調査を実施した。その結果、体験距離の近さ(死亡した職員との対人的距離の近い者、同じ業務をしていた者)、体験強度の強さ(猛獣の捕獲作業にあたった者)が、トラウマ反応(PTSD)が高くみられることが明らかになった。また、体験距離や体験強度は低いものの、発達障害を疑う職員の心無い(空気の読めない)言動により、不安定になってしまった職員もみられた。 4)平成30年度は、「発達障害」があることで、ハラスメントの被害を受けやすいこと、また、「発達障害」の職員の言動により、トラウマ反応が増悪する(カサンドラ症候群の一つ)ことが見いだされた。同組織の中で加害者と被害者が生じやすいという、今後の課題が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)事件・事故・災害は発達障害に対してどのような影響を及ぼすのか、という研究の目的に対して、新規ケースを収集することができ、さらに、発達障害があるが故に、周囲の無理解からハラスメントを被ったり、逆に、発達障害があるが故に、周囲に対して抑うつ症状やトラウマ症状を増悪させてしまうカサンドラ症候群が生じることが見いだされた。また、複数のケースについては、ロールシャッハ・テスト等を実施することができた。 2)著書の出版(久留一郎・餅原尚子著『臨床心理学―「生きる意味の確立」と心理支援―』八千代出版)、および研究成果の一部を論文投稿することができた。 3)日本ロールシャッハ学会第22回大会において、事例研究「長期化する心的外傷性障害の回復過程―ロールシャッハ・プロトコル×臨床経過に示される変化と治療―」の座長を依頼され、務めることができた。 4)不適切な指導を誘引に自殺した中学生の事例(発達障害等はみられなかった)について、第三者委員会委員として報告書を作成・提出することができた。 5)在籍している大学院心理臨床相談センター、犯罪被害者支援センター、産業保健総合支援センター等の事例には、発達障害があり、トラウマを被ったケースがあったが、他機関(発達障害者支援センター等)では得ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)前年度に続き、過去の事例、新規の事例について、PTSD症状を呈した被害者等を健常者と発達障害者等(疑いを含む)に分類し、実施した臨床心理査定の結果と臨床心理面接、および家族への面接記録等の分析については、今後も継続する。 2)警察本部、犯罪被害者支援センター以外にもフィールドを広げ、被害者支援に携わっている臨床心理士等に対し、発達障害(疑いを含む)のある被害者について、インタビューを実施する。 3)支援する側に発達障害がある場合、例えば警本部被害者支援担当者、自衛隊職員(研究分担者所属の客員研究員)、犯罪被害者支援センター・ボランティア相談員等にどのような問題と課題があるのか 、「支援者支援」のありようを検討する。 4)約30年にわたるケース(発達障害とトラウマ)の分析と、平成29年度、平成30年度に収集したケースについて、トラウマを被りやすい要因、トラウマ発症につながりやすい要因等を分析し、その結果をもとにガイドライン、あるいはチェックリスト等を作成し、予防や症状の軽減をはかる。 5)これまでの科学研究費(平成15年~17年、平成20年~22年、平成23年~25年、平成26年~28年)による欧州との学術交流をベースに、大学、病院、被害者支援センターでの発達障害のある被害者への支援、支援者支援、裁判所等での発達障害への配慮等について視察、情報交換を行い、本研究結果を踏まえた学術交流、調査等を実施する。 6)以上の結果から、発達障害のある被害者・支援者について、配慮すべき点(予防、支援の工夫、合理的配慮等)について考察し、実効性のある被害者・支援者支援システムの構築を試みる。
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Causes of Carryover |
1)パソコン、プリンターについては、現在使用中のもので支障がなかったため、平成30年度の購入は見送ることにした。 2)質的研究・定性調査用分析ソフトについては、次年度以降も逐語禄を作成するため、今年度は見送ることにした。 3)知能検査について、WAIS-IVが平成30年度に発売されたことに鑑み、検討した結果、今年度は見送ることにした。
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Research Products
(4 results)