2020 Fiscal Year Research-status Report
A Clinical Psychology Research on Influence That Developmental Disorders Give to Trauma(PTSD,CIS,etc)
Project/Area Number |
17K04480
|
Research Institution | Kagoshima Immaculate Heart University |
Principal Investigator |
餅原 尚子 鹿児島純心女子大学, 人間教育学部, 教授 (70352474)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久留 一郎 鹿児島純心女子大学, 人間科学研究科, 研究員 (40024004)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | トラウマ / PTSD / CIS / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)新規ケースについて、研究協力機関として県警察本部や犯罪被害者支援センターとの連携により、14事例にかかわった。性犯罪被害、殺人未遂、殺人、DV、虐待、交通事故等による被害者、遺族等14組に対し、臨床心理査定、ポスト・トラウマティック・カウンセリング、心理教育を実施した。そのうち、1組は、発達障害を疑う事例であり、発達障害に加え、トラウマ(PTSD)の査定、面接(親への心理教育と被害児へのポスト・トラウマティック・プレイ・セラピー)を実施した。発達障害という特性から、被害状況の意味づけは困難であること、トラウマ反応を表現しにくいことなどから、家族を含め、周囲への理解と細やかな支援が重要であることが考察された。(2)研究代表者が長を務める鹿児島純心女子大学大学院心理臨床相談センターの外来ケースでは、発達障害(自閉スペクトラム症:ASD、注意欠如多動症:ADHD等)の兄弟とその親戚(注意欠如多動症)が同時に海難事故に遭い、それを目撃・救助した親族(引率)の臨床心理査定、ポスト・トラウマティック・カウンセリングおよびプレイ・セラピーを実施した。発達障害児3名のトラウマ反応は1週間後に増悪したものの、その症状が持続することはなかった。事故直後の恐怖感情は、その後、表面上はみられなくなったが、うまく自己表現できないのか、他に注意が向いていったのかは、今後の経過観察となっている(発達障害の療育は他所で継続している)。(3)昨年度に続き職場で飼育していた猛獣により死亡した事例の査定、面接に加え、新たに別の猛獣により負傷した事故について、危機介入、心理教育を実施した。発達障害を疑う職員の心無い(空気の読めない)言動により、不安定(カサンドラ症候群)になってしまった職員もみられた。(4)COVID-19感染拡大により、英国へ渡航ができず、次年度の渡航に向けて、情報収集等を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19感染拡大に伴い、今年度も英国への渡航、および、学会等での発表が困難であった(守秘を伴う発表であるため、オンラインでの発表を辞退した)。 一方、地域への貢献として、COVID-19感染拡大に伴うメンタルヘルス(発達障害、DV、虐待等のトラウマ)の予防や啓発(心理教育)、臨床心理面接等についても県産業保健総合支援センターや犯罪被害者支援センター等の研修会、心理臨床研究会等講師、コラム等の執筆をした。 また、事件・事故・災害によるトラウマを被ったケースの臨床心理査定、臨床心理面接を継続し、発達障害との関連性について、データ収集をすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)前年度に続き、過去の事例、新規の事例について、PTSD症状を呈した被害者等を健常者と発達障害者等(疑いを含む)に分類し、実施した臨床心理査定の結果と臨床心理面接、および家族への面接記録等の分析については、今後も継続する。 2)警察本部、犯罪被害者支援センター以外にもフィールドを広げ、被害者支援に携わっている臨床心理士等に対し、発達障害(疑いを含む)のある被害者について、インタビューを実施する。 3)約30年にわたるケース(発達障害とトラウマ)の分析と、平成29年度以降に収集したケースについて、トラウマを被りやすい要因、トラウマ発症につながりやすい要因等を分析し、その結果をもとにガイドライン、あるいはチェックリスト等を作成し、予防や症状の軽減をはかる。 4)これまでの科学研究費(平成15年~17年、平成20年~22年、平成23年~25年、平成26年~28年)による欧州との学術交流をベースに、大学、病院、被害者支援センターでの発達障害のある被害者への支援、支援者支援、裁判所等での発達障害への配慮等について視察、情報交換を行い、本研究結果を踏まえ、英国・ロンドン大学等での学術交流、調査等を実施する。 5)以上の結果から、発達障害のある被害者・支援者について、配慮すべき点(予防、支援の工夫、合理的配慮等)について考察し、実効性のある被害者・支援者支援システムの構築を試みる。さらに、発達障害とトラウマに加え、COVID-19によるストレスや誹謗中傷等を含めた人間関係のありようについても考察していきたい。
|
Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大に伴い、ロック・ダウン等、英国への渡航制限があり、次年度使用額が生じた。 研究に関する情報収集をしつつ、感染収束を待ち、英国・ロンドン大学との学術交流を計画する計画である。
|
Research Products
(1 results)