2020 Fiscal Year Research-status Report
Attentional control for unexpected stimuli and individual differences
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17K04492
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| Research Institution | Kobe University |
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Principal Investigator |
松本 絵理子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (00403212)
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| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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| Keywords | マルチタスク / 課題非関連刺激 / 注意 / 個人差 / ワーキングメモリ |
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| Outline of Annual Research Achievements |
複数課題を同時に行うマルチタスク環境下では，注意の分割，課題の切り替え，プランニングなどの複雑な認知制御が必要となる。近年，複数の情報処理を並列的に進めるマルチタスク事態が日常的に経験されることから，これらの研究の重要性は高い。本研究では、課題目的非関連に予告なく付与される刺激に対する気付きを指標として、マルチタスク遂行時の注意制御とその特性に焦点をあてて検討を進めている。近年の研究動向では、課題非関連妨害刺激に対する注意制御と感情や動機などの内的状態，個人特性との関係に注目が集まっている。本課題では，個人特性に関わる調査，エラーパターンの分析などから，注意制御と個人差や感情との関連に関わる分析を進めている。平成29年度・30年度は心理実験の実施，分析と脳波研究に着手した。特に視覚課題の認知的負荷を操作し、課題非関連の聴覚刺激への気付きについて実験を行った結果、ワーキングメモリ容量の個人差が気付きと相関があり、ワーキングメモリ容量の高さが気付きの失敗を予測することが示された。令和元年度は、過年度に行った実験を発展させ，課題非関連の聴覚刺激が呈示されることを教示し、十分な学習フェイズを設けた上で、非注意性盲目（inattentional deafness）のパラダイムを用いた検討を行った。さらに令和元年度は音刺激の種類、呈示頻度を操作して、ワーキングメモリ上に表象される音刺激の種類が増加することによる聞き落としへの影響を調べた。また，令和2年度には注意制御に関する脳波の研究論文を発表すると共に（川島・松本，2020 妨害刺激の抑制に無視手がかりが与える影響，認知心理学研究），心理学実験データの解析結果を学会にて公表した（松本・石崎，2020；松本，2020）。さらにオンライン調査と対面実験を組み合わせて追加データを収集した。これらの成果は現在投稿準備中である。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度、30年度のデータ収集の成果を進展させ、マルチタスク環境下での注意抑制過程について心理実験データ，脳波実験データの両面から解析を進め，それらの一部については学術論文，学会報告として公表を行う事が出来ている。ただ，新型コロナ感染拡大の影響から，対面での接触の程度が高い脳波を用いた実験等は実施を見合わせている期間などがあり，それが期間延長の大きな理由となっている。本研究の理論的背景にある負荷理論では、近年、「処理資源」がどのような存在であるのか、モダリティ共通に配分され得るのか、ワーキングメモリ容量とは異なるものであるのか、などについて複数の研究データから議論が展開されてきている。本研究課題では、研究期間前半で実施した複数の心理実験の成果から、モダリティ共通に負荷の影響は認められ得る事を見出し、さらに、ワーキングメモリ容量の高さは聞き落としの低さを一部で予測し得ることを認めた。しかしながら、ワーキングメモリとの相関は高くなく、「処理資源」はワーキングメモリ容量とは同一ではない可能性が示唆されている。むしろ容量に寄与する注意制御機能の高さが聞き落としの背景にあるのではないかと考えられる。これらの予測を元に、実験検討の追加が必要であると判断に至り、予定より実験期間を延ばしデータ収集に努めるに至った。令和元年度から2年度における実験では、聴覚刺激の種類や出現頻度を操作して、ワーキングメモリ内に表象される聴覚刺激の種類を増加させる条件を設けた。これらの成果について学会発表を行い，投稿準備を進めている。新型コロナ感染拡大に伴う措置により直接対面が必要な実験が中止されており計画への影響は否めない。ただ、データ収集以外の作業を進め、事態が収束し安全が確認された後には速やかに再開し、データの追加解析と発表を行いたい。
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| Strategy for Future Research Activity |
本年度は引き続き，これまでに検討を行った心理学実験の成果、脳波実験で得られたデータを基に、注意抑制プロセスとワーキングメモリ容量の個人差の特性に着目した詳細なデータ解析を進める。昨年度，妨害刺激の抑制に関わる事象関連電位を用いた研究論文を公表するに至った（川島・松本，2020 妨害刺激の抑制に無視手がかりが与える影響，認知心理学研究）。本論文では，トップダウンの抑制が，注意の捕捉の回避に重要な鍵を握っていることを示している。さらに妨害刺激の抑制に関わる脳波の研究データの解析を進め，公表を行いたい。これらの研究結果から，課題に非関連な妨害刺激に対する処理の神経基盤と時系列特性が明らかになるのではないかと期待できる。
心理学実験の成果については、特に、ワーキングメモリ容量による妨害刺激抑制に関する影響が一部の条件にて認められた点に注目し、これらのモデル検証をふくめて成果公表の準備を進めている。また非関連刺激の種類と出現頻度の操作による注意の構えの影響について、データ収集を感染状況に留意しながら再開し、検討を重ねることで、マルチタスク環境下での注意制御について統合的に説明し得る可能性がある。そのため、これらの成果についてさらなる解析を進めている。それらの成果の一部は昨年度発表を行った（松本・石崎，2020）。松本・石崎（2020）では，妨害刺激の出現頻度が高い場合には，判断基準への影響がみられたが，妨害刺激の種類を単一から複数に操作するとこれらの影響は認められなくなった。この結果は妨害刺激への制御にはタスクへ配分するリソース容量だけでなく，タスクへの注意の構えや動機なども影響する可能性を示す。今後これらの脳研究の成果と心理学実験の成果をとりまとめ，注意制御とそれに影響を及ぼす要因について総合的な考察を進めたい。
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| Causes of Carryover |
未使用の生じた理由には新型コロナ感染拡大の影響がある。研究活動として，実験参加者への謝礼金及び研究発表への出張旅費を計画していたが，学会が延期ないしオンライン化された事，緊急事態宣言期間では対面での実験をかなり抑制した事，などから計画通りの実施が困難となった。
今年度も引き続き研究会活動における旅費及び対面実験での謝金執行については計画を立てにくい側面が否めないが、全体の使用計画としては、昨年度に引き続き、研究成果報告及び情報収集の目的で学会参加費用、追加実験の遂行に必要な実験参加者への謝金及びそれらのデータ解析に用いるためのアプリケーションおよびメディア類の購入費用、成果報告を国際学会誌上で行うための英文校閲費用、投稿費用、別刷印刷費等出版に伴う経費、等に用いることを計画している。
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Research Products
(5 results)
