2020 Fiscal Year Research-status Report
Mechanisms for circle distortion illusion induced by flash presentation
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17K04498
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
櫻井 研三 東北学院大学, 教養学部, 教授 (40183818)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 錯視 / フラッシュ呈示 / 図形変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで円図形の変形錯視は長時間観察による順応で生起する一種の残効と考えられていた (Ito, 2012; Khuu, McGraw,& Badcock, 2002)。本研究では,この図形変形錯視と同様の知覚が,円図形とそのグラデーション図形を交替させるフラッシュ呈示により短時間で生起することを確認し,「ポリゴン化効果」と名付けて,その生起機序の解明を目指している。 計画を延長して4年目に入った2020年度はコロナ禍で実験施設の利用が困難となり,参加を予定していた国際学会も延期となり,実質的に研究活動ができない状態が続いている。そこで予定していた補足データの収集を一旦中断し,次の3点に研究活動の内容を変更した。第1に,これまでの実験結果を整理すると同時に先行研究の再調査を行なった。それによりCurvature検出機構の研究の中には,円と多角形の処理の連続性を示唆するものが含まれていることが判明した。第2に,2019年にカナダのトロントで開催されたICPVで発表した内容を発展させ,Ito (2012) が報告した多角形の残像が円図形に見えるというポリゴン化効果とは逆方向の変形錯視が,多角形のフラッシュ呈示でも生起するか否かの問題について,主に現象観察による知見の蓄積を行なった。第3に,論文化の作業に着手した。本研究には図形変形錯視(ポリゴン化効果)の生起機序の解明という側面と同時に,フラッシュ呈示が知覚的順応を促進させている可能性を検証する側面を持つ。これら2つの側面を同時に取り込めるような原稿を目指して執筆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究計画では,この図形変形錯視(ポリゴン化効果)の生起機序の解明を目的とし,ポリゴン化効果が先行研究の長時間観察での順応にもとづく図形変形錯視と同じメカニズムに依存するか否かについて,以下の3点を中心に年次計画で研究を進めている。第1点は,静止円を凝視させた場合と,グラデーション図形との交替呈示を観察させた場合の,円図形変形錯視の生起潜時の比較(2017年度)である。第2点は,円図形変形知覚を誘導するグラデーション(円図形の輪郭と対になる灰色領域)のバリエーションの検討と刺激呈示眼の操作による生起部位の検討(2018年度)である。第3点は,Curvature 検出機構モデルおよび受容野モデルによる説明の可能性の検討(2019年度)である。このポリゴン化効果を説明するモデルの構築に必要な追加実験を実施したものの,論文の作成に十分な時間が取れず,期間を延長して研究の完成を目指したが,コロナ禍で研究活動の中断を余儀なくされている。ゆえに,研究全体の進捗状況は「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画を2回延長して5年目となる2021年度は,コロナ禍の状況を見据えながら補足データを収集する機会を伺う。また,Curvature 検出機構モデルおよび受容野モデルによる説明の可能性の検討をおこない,これまでの実験結果をもとに,研究成果の論文化を目指す。第1のモデルとして,Curvature検出機構そのものが曲線的に並んだ小さな線検出器の集合である可能性が考えられる。第2のモデルとして,そのような機構の出力とより大きく長い線検出器の出力との関係でポリゴン化効果が生じているという説明も可能である。これらの可能性を実験結果から検証し,ポリゴン化効果を説明する適切なモデルの構築を試みる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で予定していた補足データの収集と投稿論文の準備が遅れ,論文掲載料の相当額が使用されずに残ったことが理由である。研究期間を1年延長した2021年度の研究費は主に論文の投稿と掲載費用に充てる計画である。
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