2019 Fiscal Year Research-status Report
実環境における物体色知覚および照明光推定機構の心理物理実験と分光計測による解明
Project/Area Number |
17K04503
|
Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
福田 一帆 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (50572905)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 色覚 / 色恒常性 / 照明光 / 物体色 / 分光計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
実環境における物体色知覚に関して,自然風景画像および人工物を撮影した画像を用いてその被写体の色や明度の知覚を心理物理実験により測定した.この実験では,対象物の素材や質感の影響を検討するために,オリジナルの画像と同等の素材感を維持したまま色数を限定した「物体画像」と,それと同一の色を幾何学形状に置き換えて配置した「無意味画像」の間で画像中のターゲット色が発光して見えない上限の輝度(物体色上限輝度)を比較した.なお,物体画像の作成には,オリジナル画像の色情報を類似度により20群に分類して,それぞれの代表色に置き換える方法により色数を20色に限定した.その結果,被写体の種類にも依るが,素材感の無い無意味画像の方が高い物体色上限輝度となる傾向が表れ,物体の色や明るさの知覚に素材感が影響することが示唆された.当該研究の成果は国際会議にて発表をおこなった. シーンの色度輝度分布から照明光の強度と色を計算により推定する提案モデルを検証するための実験をおこなった.自然光のスペクトル測定データと自然物の分光反射率測定データに基づく色を配置した刺激を用いて,被験者によるターゲット刺激の色の見えの調整結果からその被験者の色覚系による推定照明光を求め,計算モデルによる推定結果と比較した.解析の結果,実験刺激の条件にも依存するが,提案モデルは従来モデルよりも実験結果に近い推定値を示し,提案モデルの有効性を示唆した.当該研究の成果は国際会議にて発表をおこなった. 不均一な照明環境における色覚の個人差の研究として,人により青/黒,白/金に見えるドレス画像の知覚による被験者グループ間で,照明環境が曖昧なシーンにおける物体色の見えを比較する実験を実施した.本実験については研究方法などを改善して継続予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心理物理実験の実施と照明光推定計算モデルの改善と検証については,昨年度に引き続き順調に研究を推進することができた.研究成果が表れた物体色知覚への物体の素材感の影響に関する研究と.照明光推定計算モデルの検証については,国際会議にて研究成果の発表をおこなった.一方,不均一な照明環境における照明光推定の個人差の研究に関しては,実験は順調に実施したものの,結論には至っていないため,次年度も引き続き検討が必要である. 自然画像を利用した研究については,ハイパースペクトルイメージに3次元の空間情報データを統合する作業は3次元情報の取り扱いが順調に推移せず,当初の計画どおりには進んでいない.そのため,他の手法を用いて作成した実験刺激を利用することにより,心理物理実験および照明光推定のモデル化については順調に研究を遂行している.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は,分光計測とその解析方法に関する研究と,心理物理実験による色覚特性の研究を主に推進する.またこれまでの研究成果から原著論文を執筆する. 分光計測とその解析方法については,不均一な照明環境を考慮した分光画像の作成のため,引き続き2次元分光計測データと空間の3次元情報を統合する方法についての検討をおこなう. 心理物理実験による色覚特性の研究については,不均一な照明環境における色覚の個人差の研究を今年度実施し,実験刺激の作成および実験手法の改善などは順調に進んだものの,実験の結果,仮説に整合する結果とはならなかった.ただし,実験刺激や被験者の応答手法など見直すべき課題も発見されたので,次年度引き続き研究を推進する計画である.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,リサーチアシスタントの雇用費が発生しなかったため,また,原著論文の投稿料支払いが今年度から次年度へと変更となったためである.当該助成金は翌年度分の助成金とあわせて論文投稿料に使用する計画である.
|
Research Products
(2 results)