2019 Fiscal Year Research-status Report
絶対的な大きさ知覚の情報処理過程とその神経基盤についての検討
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17K04504
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
實吉 綾子 帝京大学, 文学部, 准教授 (90459389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道又 爾 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (00229733)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大きさの知覚 / 身体近傍空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は絶対的な大きさの知覚かが、"手の届く範囲"においてどのように行われるのかについて検討を行うものである。 平成29年度、平成30年度は、手の届く範囲における絶対的大きさ知覚の正確性について、前方のテーブル上、もしくは前額平行面に設置したディスプレイに刺激を提示する方法で検討を行った。その結果、いずれの提示方法でも無意識的な報告(運動報告)では距離によらず正確な大きさ知覚が実現されていたが、意識的な報告(言語報告(実験1)、手元を見ながらの運動報告(実験2))では手の届く、届かないに関わらず大きさの恒常性の働きが認められた。また、手の届く範囲における知覚・認知機能の向上を検討する一環として、道具の習熟化と近傍空間に関する検討を行ったところ、手の近傍空間の成績向上が、道具の習熟後は 道具近傍に移動することを確認した。 令和元年度は、線分二等分課題を用いて近傍空間と遠方空間における注意の異方性を検討した。その結果、近傍空間においては左側の過大視が認められたが遠方空間では認められなかった。さらに、指示棒やレーザーを可視化したレーザーポインタを把持すると遠方空間でも左側の過大視が認められた。これは近傍空間が視覚的な延長によって拡張することを示している。 さらに対象を自閉スペクトラム症者(ASD者)にも広げ、身体の大きさのイメージを回答する課題、また手の近傍、遠方空間における刺激検出課題を行なった。その結果、ASD者は身体の大きさイメージが不正確であり、また身体近傍空間での検出促進が認められない傾向があった。本年度は分析を進め、論文としてまとめる予定である。 研究結果の一部はPsychonomic society(2019)にて発表された。 また、線分二等分課題ならびに自閉スペクトラム症者を対象とした実験の結果は2020年度の各学会において発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初に予定された通り、身体近傍空間での絶対的大きさ知覚の正確性を検討は概ね順調に進めることができている。しかし、計画の段階では身体近傍空間において正確性が向上すると予測していたが、結果は近傍空間における絶対的大きさが過少視される可能性が示されている。そこで身体近傍空間の知覚・注意特性を明らかにするために、道具の使用やASD者との比較など多角的に検討を行なっている。またこれまでに実施した研究については国内外の学会で発表を行い論文化も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年は大学実験施設のリニューアル工事のために実験が遅れたが、現在のところ概ね実験は終了している。本年度はデータの分析を進め、国際学会での発表、論文の投稿を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度から令和元年度にかけて実験施設の改装工事が行われたため実験が進められない時期があり、全体的に研究の論文投稿が遅くなってしまった。令和二年度にデータをまとめ、論文投稿・発表の費用として使用する予定である。
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