2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04506
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
前原 吾朗 神奈川大学, 人間科学部, 准教授 (90401934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 淳司 川崎医科大学, 医学部, 教授 (90447607)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 弱視 / 運動視 / 眼間抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
片眼弱視とは、発達過程において正常な視覚経験が得られなかったこと(斜視や不同視など)が原因で起こる視覚障害である。弱視患者の多くは弱視眼に視力低下などの障害を示すが、他方の眼(健眼)における知覚は健常に近い。 本研究の狙いは、閾上刺激の運動に対する知覚において弱視眼が障害を持つかどうかを心理学実験に基づいて明らかにすることである。実験参加者の課題は運動するランダムドットの速度を左右眼間でマッチさせることであった。先行研究において弱視眼においては明るさが暗く知覚されることが示唆されおり、本研究においても同様を結果が得られた。しかし、健眼と弱視眼との間でマッチング速度に違いはなかった。このことは、片眼弱視患者が閾上刺激の運動速度知覚においては障害を持たないことを示唆している。また、片眼弱視患者においてはNDフィルタなしにプルフリッヒ効果が生じたと報告している研究があったが、本実験参加者の内省からはプルフリッヒ効果は報告されなかった。立体視力を計測不可能な片眼弱視患者の一部において、一方の眼の前にNDフィルタを置いたときにプルフリッヒ効果を報告した。プルフリッヒ効果が片眼弱視患者の立体視テストとして有効である可能性があると考えられる。本研究の成果は学術論文としてまとめられ、Optometry & Vision Science 誌に投稿し、受理された。 また、両眼開放した状況において弱視眼への刺激呈示による脳活動について検討する脳機能画像研究も実施した。心理学実験では弱視眼において明るさの低下が報告されているにも関わらず、視覚野のV1とV2、V3において健眼対応部位と比較して弱視眼対応部位の活動低下は見られなかった。このことは、より高次の処理段階で弱視抑制が働いていることを示唆している。本研究の成果は学術論文としてまとめられ、Vision 誌において公表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
輝度差によって定義された閾上刺激の運動知覚において、弱視眼が障害を持つかどうかを心理学実験に基づいて検討した。本実験から得られた知見は論文としてまとめられ、Optometry & Vision Science 誌に受理された。また、弱視眼への刺激による脳活動を計測した脳機能画像実験を実施し、その成果を Vision 誌において公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本実験の結果において、健常者に比較すると片眼弱視患者の成績の個人差は大きかった。この個人差が何に由来するのか、何かしらの弱視症状の重篤さに関連するのかは不明である。視覚課題成績の個人差が、どのような弱視症状と相関するかを検討することが必要であると考えられる。こうした知見は、弱視の原因を探る重要な手がかりになるとともに、診断ツールとして有効である可能性がある。
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Causes of Carryover |
論文の受理決定が当初予想よりも遅れ、投稿料に関する支出額が未定であったために、予算執行を行うことができなかった。 次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と合わせ、実験装置の購入に充てる計画である。
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Research Products
(3 results)