2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04508
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Research Institution | Shizuoka Sangyo University |
Principal Investigator |
山田 一之 静岡産業大学, 経営学部, 教授 (50212288)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 古典的条件付け / 恐怖条件付け |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ヒトの知覚情報処理において、認知バイアス(特に注意バイアス)が及ぼす影響について実験心理学的に明らかにすること、およびその神経科学的メカニズムの解明のための実験システムの開発を目的としている。初年度である平成29年度は、研究実施のための研究基盤の整備およびヒトを被検者とした古典的恐怖条件付けの予備的な実験を実施した。 具体的には、市販のヘッドフォンで提示する聴覚刺激(2000Hzあるいは4000Hz、65dB、3-10秒:背景刺激は換気音約40-45dB)を条件刺激とし、手首に対するごく弱い強度の電気刺激(機器出力として1mA程度、10msecで5-10パルス)を無条件刺激として対提示した。恐怖反応(条件反応)の行動指標として顔面の筋電位を眼輪と頬の2か所で測定し、同時に生理学的指標として体表面温度(手のひら)及び皮膚電気抵抗(指先)を計測した。聴覚刺激はマイコンボード(Arduino Uno)により生成し、市販のヘッドフォンアンプで増幅して被験者に提示した、また電気刺激はPowerLab(アドインスツルメンツ社)のスティミュレータを利用した。条件付けの制御はプログラミング言語(LabView:ショナルインスツルメンツ社)によって行い、被験者の反応はLabChart8(アドインスツルメンツ社)によって記録した。 予備実験の結果から、本年度に構築した簡易な実験システムを用いても、ヒトに対する古典的恐怖条件づけを形成できることが確認できた。一方、生理学的評価については、体表面温度は変化が小さくまた遅いため、条件付けの指標として用いることが困難であった。同様に、皮膚電気抵抗も変化が遅く条件反応として用いることは難しいが、実験の反復に伴い、電極等の装着時点から変化が見られたため、条件付けの進展に伴って獲得される不安反応の指標として有効であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初実験計画にはなかった被験者・実験参加予定者に対する認知バイアス傾向の調査票の作成および予備調査を行ったため、研究の進捗状況に若干の遅延が生じた。 本研究では、被験者の身体(顔面および手首など)に対する電極の装着や手首等への電気刺激提示を行うため、被験者の実験に対する態度・構えにある程度の個人差が生じることが予想された。しかし、予備実験にあたって、これらの個人差が予想以上に大きく、今後の研究において認知バイアス・注意バイアスの形成およびその評価に影響を及ぼす可能性があると考えられた。そこで、被験者の個人的な認知バイアス傾向についてあらかじめ調査・確認を行う必要があると判断し、質問票の作成と予備調査を行った。質問票の作成には先行研究(Peters et al., 2013; Ishikawa et al., 217)を参照した。 質問紙調査によってあらかじめ被験者・実験参加予定者固有の認知バイアス傾向を確認することは、実験時における被験者の苦痛軽減とともに被験者の数を必要最小限にとどめることも可能とするため、研究倫理的側面からも有効であると思われる。予備調査については現在結果を分析中であるが、平成30年度は調査結果をもとに被験者の選定を行い、研究の効率化を図る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、当初予定通り、ヒトを被験者とした聴覚性驚愕反応およびそのプレパルス抑制試験(PPI)の簡便な装置の開発および予備実験を実施する。 研究の進捗状況について、当初計画から若干の遅延を生じているが、研究の効率化を図ることによって、平成30年度内でこの遅延を解消する予定である。研究の遅延の主要な原因である被験者固有の認知バイアス・注意バイアス傾向が実験結果に影響及ぼす可能性については、平成29年度に作成した調査票によるスクリーニングを実施することで調整が可能であると考えている。また、研究遂行のための基盤整備(備品の購入等)については、平成29年度内に当初計画よりも進めることができたので、遅延の解消に向けて研究を加速する予定である。 本研究で実施する実験は、電極の装着や電気刺激の提示によって被験者に一定の苦痛を与える。実験参加の意思確認(文書によるインフォームドコンセント)は言うまでもなく、常に被験者の苦痛の低減策を考案・推進することが必須である。研究課題の遂行とともに、顔筋電計測用の電極および電気刺激提示法の改良を行う。更に電気刺激以外の無条件刺激の選定を行い、その利用についてもあわせて検討をして行く予定である。
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