2017 Fiscal Year Research-status Report
「ケアリング・コミュニティとしての学校」における教師の専門的力量形成過程の研究
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17K04529
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
北田 佳子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (60574415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教育学 / 教師教育 / 教職専門性 / ケアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、「ケアリング」を中核とした教師の専門的力量がどのように形成されていくのかを明らかにするための基礎作業として、以下の2点を中心に研究を進めた。 第一に、本研究の理論的基盤の一つであるノディングズのケアリング論の整理を進めるとともに、現代の日本の授業研究において、ノディングズの言う「ケアリング」概念がどの程度、どのような形で扱われているかを具体的な事例と関連づけながら分析した。その成果を世界授業研究学会で口頭発表するとともに、国内外の研究者ならびに実践者と意見交流を行った。(“What are Lesson Studies in Pursuit of ‘Happiness’?”World Association of Lesson Studies 2017 International Conference, Nov.26, Nagoya University) 第二に、日本において長い歴史をもつ授業研究について、明治期・大正期・昭和期の時代区分で整理し、各期の特徴と教師の専門的力量形成に与える影響を分析した。特に、各期の授業研究において、「どのように教えるか」だけにとどまらず、学習者である児童生徒が「どのように学んでいるか」という視点が、どの程度教師たちに意識化されているのかという点に着目して分析を進め、その成果を論文として発表した。(「教育の『定型化』に挑む教育実践研究の歩み:明治期・大正期・昭和期の授業研究に焦点化して」日本教育方法学会編『教育方法46 学習指導要領の改訂に関する教育方法学的検討:「資質・能力」と「教科の本質」をめぐって』2017年、98-110頁)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度である平成29年度は、「ケアリング・コミュニティとしての学校」に関する理論研究を実施することを目的とした。この目的を達成すをるために、第一に、本研究の理論的基盤の中核にあたるノディングズのケアリング概念を整理し、具体的な学校現場の事例と関連づけて国際学会で発表を行い、第二に、学習する組織として日本の伝統的な授業研究を通史的に検討し、その成果を論文化した。これらの成果により、初年度の目的はおおむね達成できたと考えている。 ただし、ノディングズ以外のケアリング論については、現在、概念整理・分析の途中であり、平成29年度中にその成果を発表できなかったので、これは次年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、「ケアリング・コミュニティとしての学校」の事例としてアメリカの学校の視察や関係者へのインタビューを行い、教育実践の実態を明らかにするとともに、教師の専門的力量形成に寄与する組織の在り方を分析する。特に当該校における学習に困難を抱える子どもたちへの支援について、教師たちがどのような協同的支援や専門性開発を行っているのかを分析する。 平成31年度は、校内授業研究を中心にした「ケアリング・コミュニティとしての学校」づくりを日本で実践している学校でフィールドワークやインタビュー調査を行い、教師が同僚とともに専門的力量を高め合う学校組織の実態を明らかにする。特に、当該校の取組の特徴である「ケアリングと学習の一体化」という実践に焦点化し、毎月開催される校内授業研究を通して、教師たちが同僚とともに、どのような過程を経て「ケアリングと学習の一体化」に求められる専門的力量を形成していくのかを分析する。 以上の研究を進めると同時に、平成29年度に引き続き、理論研究をさらに推進することで、具体的な学校現場の事例を理論的な視点から分析・考察し、これまで、ともすると専門的力量としての位置づけも、またその形成過程も曖昧であった「ケアリング」という概念が、専門職としての教師の実践と成長にいかなる役割を果たしているのかを解明する。
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Causes of Carryover |
本研究の理論的基盤を形成する「ケアリング」概念に関する書籍のうち、平成29年度以内に入手できなかったものが一部あった。そのため、若干の金額を次年度に繰り越すこととなったが、この繰り越し金は、平成30年度の助成金の「物品費」と合わせて、購入予定だった「ケアリング」概念に関する書籍の購入にあてる計画である。
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Research Products
(2 results)