2019 Fiscal Year Research-status Report
「ケアリング・コミュニティとしての学校」における教師の専門的力量形成過程の研究
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17K04529
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
北田 佳子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (60574415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育学 / 教師教育 / 教職専門性 / ケアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年8月から令和2年6月まで、日米教育委員会のフルブライト客員研究員としてアメリカ・カリフォルニア州にある教育研究機関Reach Institute for School Leadershipに所属し、現地の現職教師向けにレクチャーを行うとともに、教師教育カリキュラムの開発に携わった。この機関が提供しているプログラムは、貧困層やマイノリティの子どもたちの教育に従事する現職教師たちを対象としたものであったため、「ケアリング・コミュニティとしての学校」の事例として複数の現地学校の視察、関係者へのインタビュー、文献調査等を実施することができた。特に、本研究が注目する「授業研究」という教師の学習の機会について詳細な調査を実施した。具体的には、アメリカにおける「授業研究」の普及に大きな役割を果たしてきたキー・パーソンであるミルズ大学のキャサリン・ルイス氏やデポール大学の高橋昭彦氏への聞き取りや、彼らが実際に関わっている現地学校への視察を行い、約20年前に日本からアメリカに輸入された「授業研究」が、現地でどのように展開してきたのか、そして、さまざまな困難を抱える子どもたちの教育に従事する教師たちの学びと成長にとって、「授業研究」がどのような役割を果たしているのかを詳細に調査することができた。 このフルブライト客員研究員の契約は、在任期間中は当該機関の正式なスタッフとしてその業務を中心に行う必要があったため、さまざまな調査結果の成果を本年度中に発表することはできなかったが、現在、昨年度までの調査と合わせてデータの整理と分析を行っている途中であり、次年度に論文化や学会発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、令和元年8月から令和2年6月までフルブライト客員研究員としてアメリカに滞在することになったため、当初の研究計画を一部変更し、調査の実施時期を一年間延長した。本来、令和元年は、日本のおける「ケアリング・コミュニティとしての学校」づくりを実践している学校でのフィールドワークやインタビュー調査を行うことを計画していたが、その計画を変更し、これまで行ってきたアメリカ調査を拡大し実施することとした。昨年度実施したアメリカの現地調査は、ニューヨークやマサチューセツなどの東海岸の事例であったのに対し、本年度の調査はカリフォルニアを中心とする西海岸で行ったため、地域性の違いによる「ケアリング・コミュニティとしての学校」の実態に関する重要な知見を得ることができた。また、昨年度のアメリカ調査が数日程度の短期間であったのに対し、本年度は約10ヵ月間にわたる長期間の調査であったため、さまざまな困難を抱える子どもたちやその教育に従事する教師たちの実態を詳細に調査することができたため、目標は概ね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度にあたる次年度は、平成30・令和元年度に実施したアメリカ現地調査の成果を発表するとともに、アメリカ調査の結果と日本における「ケアリング・コミュニティとしての学校」の事例調査を関連付けながら、日本への示唆を明確化していく予定である。特に、各事例における「ケアリングと学習の一体化」という実践に焦点化し、日本の教師教育にとって重要な役割を果たしている校内授業研究を通して、教師たちが同僚とともにどのような過程を経て、「ケアリングと学習の一体化」という実践を推進するための専門的力量を形成しているのかを分析する。 そして、これまでの4年間の研究調査結果を総括し、「ケアリング・コミュニティとしての学校」の特徴を実践・理論の両面から描出する作業を通して、「ケアリング」という概念が、教師の専門性にとっていかなる役割を果たしているのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
令和元年8月から令和2年6月までフルブライト客員研究員としてアメリカに滞在することになり、当初の調査計画を一部変更し研究実施期間を一年間延長したため、本来令和元年度に使用予定だった調査費や文献購入費等を、次年度に繰り越すこととなった。この繰り越し金は、次年度における調査費、文献購入費、データ分析にかかる費用等に使用する予定である。
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