2019 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical Research on the Political Neutrality of Public Education
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17K04530
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小玉 重夫 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (40296760)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 公共性 / シティズンシップ / アクティブラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は実践的課題に焦点化し、日本および諸外国における政治教育やシティズンシップ教育の実践から、教育における政治的中立性の確保をめぐる今日的な条件を探りあてていくことをめざした。具体的には、アメリカからHarry Boyte(Sabo Center for Democracy and Citizenship, Minneapolis, Minnesota)を招聘し、イギリスからはGert Biestaを招聘し、8月に世界教育学会と日本教育学会において共同のセッションを持ち、議論と意見交換を行った。また、それらと並行して、日本での18歳選挙権成立以後の政治教育、主権者教育の実践の理論的意義を、現在申請者が関わっている学校や教育委員会での実践を中心に、検討した。特に、東京大学教育学部附属中等教育学校が文部科学省研究開発学校の指定を受けて進めている、協働的な学びを通じて「市民性」と「探究」志向性を育成するための新教科「探究的市民科」の設置の事業が4年目になり、申請者はその運営指導委員に従事しているので、この事業の成果を、教育における政治的中立性を新しい形でふまえて実践事例として位置づけることを行った。くわえて、沖縄県宮古島市立池間小中学校での総合学習の実践に参加し、アクティブラーニングを通じてのシティズンシップの育成について研究を深めることができた。そして、これらの日本および諸外国でのシティズンシップ教育の実践検討をふまえたうえで、それらの国際連携を行い、国際シンポジウムや研究会などを行うことによって、教育の政治的中立性の新たな枠組みをふまえた政治教育、シティズンシップ教育の提案へ向けての作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
東京大学教育学部附属中等教育学校の「探究的市民科」については、申請者が同校の校長在職時(2014-2015年度)にその構想と研究開発学校申請に関わり、研究開発学校採択後は運営指導委員としてその実践に関与しており、日本での政治教育とシティズンシップ教育の先進事例を創出する環境が整備されていたため、当初から一定の成果を獲得することが予想できた。これに加えて本年度は、沖縄県宮古島市教育委員会との連携を行うことが可能となり、アクティブラーニングと探究型学習を通じてのシティズンシップの形成に関して、当初の予期以上の成果を得ることができた。 また、国際面に関しては、代表者はすでにHarry Boyteらとの共同著作を発表しており(Harry Boyte(ed.), Democracy'sEducation: Public Work, Citizenship, and the Future of Colleges and Universities, Vanderbilt Univ Press, 2014)、その成果にもとづいた国際連携の基盤が整っていたため、一定の成果が予測されたが、これに加えて、本年度はGert Biestaの招聘も可能となり、両者の共同による国際シンポジウムを行うことができ、当初の予想を上回る成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年2月から3月にかけて、新型コロナウィルスの感染が日本および世界で急速に拡大して、当初予定していた海外からの研究者の招聘や、国際シンポジウムの開催ができなかった。これらの積み残しを次年度以降継続すると共に、コロナウィルスの感染拡大によって生じた生活様式の変容、社会的課題の解決に、主権者教育がいかに寄与しうるかを検討していくことが、今後の課題であると考えている。
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Causes of Carryover |
2020年2月から3月にかけて新型コロナウイルスが世界および日本で急速に感染拡大した結果、当初予定していた海外からの研究者の招聘、研究会等の実施が不可能になり、翌年度での使用が必要となったため。
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