2022 Fiscal Year Research-status Report
保育者の実践を省察する力量形成過程とその要因の調査研究:園内研究会での語りの変容
Project/Area Number |
17K04536
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岸野 麻衣 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (80452126)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 保育者の力量 / 園内研究会 / 実践の省察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,保育実践について語り合う園内研究会において,保育場面から何をどう見て取り出してどう語るかという保育者が実践を省察する力量の問題に焦点を当て,「保育を見る目・語る力」として概念化し,こうした力量を形成する背景の園内コミュニティや社会・文化・制度的文脈を明らかにしようとするものである。 本年度は,継続して対象園の園内研究会に参加しながら,引き続きデータ収集を行い,コロナ禍による制限で欠けたデータを補完しつつ,保育を見る目・語る力といった力量が長期的な展開の中で,どのように形成されていくのか,またそれがどのような要因に支えられているのかを検討してきた。 各園の事例分析を行った結果,研究の成果として次の3点が明らかになってきた。第1に,保育を見たあとの語りがさまざまに引き出され,細やかになると共に,対話により自己省察が深まっていくには,ミドルリーダーの役割が大きかった。園内の人事の状況等により,ミドルリーダーとなる中堅保育者が園内研究会の進行にコミットするようになり,その際に自分自身が園内研究会の意義や面白さを感じていることが重要であった。第2に,記録と指導案の在り方をめぐる検討が重要であった。指導案を作成することが目的化し,形式や文言の検討に重点が置かれると,園内研究会はうまくいかなくなった。一方で,園によっては,日々の子どもの記録と保育者の丁寧な省察をベースに,保育の方向や保育者の葛藤を描きだすような指導案が作成され,保育を見る目・語る力の力量形成の基盤となっていた。第3に,大事にしたいことのビジョンを共有し,管理職から会計年度職員まで,多様な立場の保育者が学び合っていく園の在り方が重要であった。そうした在り方を支える研修の在り方についても示唆された。このように,保育者が実践を省察する力量形成プロセスとそれを支える要因について,長期的な展開を捉えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍が徐々に収束に向かう中で,園内研究会の訪問等を再開できる状況となり,順調に進捗しつつあった。ただし,学会大会は依然としてオンライン開催を取る場合も多く,研究成果に関する議論が十分とはいえない状況であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究最終年度として,継続して対象園の園内研究会に参加しながら,引き続きデータ収集を行い,コロナ禍による制限で欠けたデータを補完しつつ,長期的な展開の中で,保育を見る目・語る力がどのように変容していくのかを検討し,研究のまとめを行っていく予定である。対面による学会大会も再開されてきた状況の中で,研究成果に関する議論を十分に行い,その吟味を踏まえて,研究成果とまとめていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍が続いたことにより,研究の分析補助に支障が生じたほか,予定していた国内・国際学会への参加ができず,次年度使用額が生じた。 次年度においては,データ収集の継続に必要な物品や消耗品,資料整理や分析補助の謝金,対面で学会が開催された場合には学会への参加旅費等に使用する計画である。
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