2017 Fiscal Year Research-status Report
Multicultural Teacher Education in Pre-service Programs at Universities in Ontario, Canada
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17K04541
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
児玉 奈々 滋賀大学, 国際センター, 教授 (10389603)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カナダの多文化教師教育 / 多様性に対応できる教師の育成方法 / フィールドスタディ |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の計画として設定していた研究を、ほぼ予定通りに推進した。 まず、北米の先行研究を参考に、多文化教師教育の理論と実践の発展を考察した。文化的・言語的に多様な子どもに対応できる教員を育成する多文化教師教育の必要性の議論が1960年代後半頃のアメリカで始まったこと、教職課程カリキュラム全体を通じた様々な形態の教育方法による統合的な多文化教師教育実践が追求されてきたこと、全米各州政府が教員養成プログラム課程認定基準に「多様性」の項目を組み入れるなどの制度整備を進めてきたことなどの過程を整理した。一方、カナダではアメリカの多文化教師教育理論を採用した個々の実践は行われてきたものの、各州政府が行う教職課程認定でも教職課程で多様性を扱うことは必須ではなく、実際の教職課程の編成や運用でも多様性の扱いは各大学ごとに異なっていた。 次に、本研究が対象とするオンタリオ州の多文化教師教育の実施状況の調査を実施した。オンタリオ州では、2015年に、修業期間の延長の他、多様性に関わる内容を教職課程カリキュラムで扱うことなどを必須とする大規模な教員養成プログラム改革が行われた。現在、州内の大学に設置されている18の教員養成プログラムが発行するプログラム概要とシラバスを分析し、文化的多様性(cultural diversity)をテーマや内容とする授業科目、フィールドスタディ科目の位置づけを考察した。 そして、18の教員養成プログラムの中から文化的多様性を扱った授業科目とフィールドスタディの両方を開講している3校を選び、現地訪問調査を実施した。それぞれの多文化教師教育実践に対する自己評価と課題について、教職課程担当教員からの聞き取りを行った。併せて、州の教員資格認定機関であるオンタリオ州教員協会を訪問し、現行の4学期型教員養成プログラムにおける多文化教師教育について聞き取りおよび資料収集を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オンタリオ州の多文化教師教育の実施状況の調査では、オンタリオ州の16大学に設置されている18の教員養成プログラム(英語によるプログラム16、フランス語2)が発行しているプログラム概要とシラバスを分析し、文化的多様性(cultural diversity)をテーマや内容とする授業科目、フィールドスタディ科目の位置づけを考察した。当初は教員養成プログラム担当教員を対象にアンケート調査(ウェブアンケートシステム利用によるオンライン調査)を計画していたが、調査依頼への回答率が低かったため、計画を変更し、ウェブ上に公開されているプログラム概要とシラバスを分析した。 また、この実施状況調査の結果をもとに、当初計画にあった、教員養成系大学の海外留学への取り組み方で分けた三類型の分類方法について一部見直しを行った。多文化教師教育理論において推奨されている講義科目とフィールドスタディの二つの教育方法を基軸に、それらへの取り組み方の違いで各大学を分類することとした。この改訂後の類型を用いて、現地訪問調査の対象校を選定した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度にオンタリオ州の教員養成系大学3校で実施した現地訪問調査の成果発表を中心に、研究の中間報告を行う。日本国内の学会(日本比較教育学会)及び国際学会(アジア比較教育学会)で口頭発表し、比較教育学、国際教育学、教師教育学の専門家から本研究に対してのコメントや助言を得る。 多文化教師教育への取り組み方において、前年度現地訪問調査を行った3大学とは異なった特徴を持つ大学を数校訪問し、教職課程担当者を対象に、4学期型教員養成プログラム導入後の多文化教師教育への取り組みの実態と課題についての聞き取り調査を行う。
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Causes of Carryover |
訪問先の都合により、カナダ現地訪問調査が当初予定していた時期より遅れたため、聞き取り調査結果の英文テープ起こし作業委託および学会中間報告用原稿の英文校正作業の委託を次年度に行うことになり、委託料も次年度使用に変更したことが理由である。 次年度使用額は、英文テープ起こし作業委託料および英文校正作業委託料として使用する計画である。
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