2017 Fiscal Year Research-status Report
新教育運動における「国際化」の進展と「郷土」形成論の相克に関する比較史的研究
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17K04550
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
渡邊 隆信 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30294268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 洋子 福山平成大学, 福祉健康学部, 教授 (40311823)
宮本 健市郎 関西学院大学, 教育学部, 教授 (50229887)
山名 淳 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (80240050)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 新教育運動 / 国際化 / 郷土 / ドイツ / アメリカ / イギリス / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「新教育運動期における『国際化』の進展と『郷土』形成論の相克に関する比較史的研究」というテーマのもと、具体的な課題として、①新教育運動における「国際化」の進展の具体像を解明すること、②新教育運動における「郷土」形成論の特質を解明し、「郷土」と「国際化」の関係について検討すること、③新教育運動における「郷土」教育の実践を解明すること、の3つを設定した。平成29年度は本研究に関わる先行研究をフォローしながら、主に資料の収集と読解を行った。 資料収集にあたっては、上記の3つの課題に対応したかたちで研究を進めた。①の課題については、新教育における「国際化」をリードした新教育連盟の機関誌『The New Era』の記事を網羅的に点検した。②の課題については、H.F.ジョンソン(イギリス)、J.ペリー(アメリカ)、E.ヴェーニガー(ドイツ)、入澤宗寿(日本)等の人物の思想と活動に関する資料を収集し、分析を開始した。③の課題については、鳥取県倉吉市の成徳小学校における「文化科」の実践に着目し、同校訓導の伊佐田甚蔵が残した論文や実践記録を収集した。とりわけ伊佐田と入澤の共著である『文化教育と郷土教育』は日本とドイツ、実践家と理論家の交わりのなかで郷土教育が実践されたことを示す重要な著書として分析を行った。 研究を進めるにあたり、採択通知決定後に電子メールで研究の目的や方法について共通理解を図ったうえで、研究メンバーが5月、9月、2月の3回、神戸大学に集まって研究会を開催した。研究会では、それぞれの進捗状況を報告するとともに、英米独日4カ国における「国際化」の進展の「郷土」形成論について共通点や相違点を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1年目の29年度は、英米独日の比較史的研究の遂行にあたり、各国の新教育運動の特色を考慮しながら、おおまかに研究対象となる人物や学校に選定することを目指した。その上で、当該人物や学校における「国際化」と「郷土」形成論に関する資料を調査し、重要と思われる資料を順次収集することができた。 29年度に収集できた資料の種類は、著書、雑誌論文、実践記録、書簡といった具合にさまざまであり、各国の研究対象によって偏りがある点については、30年度以降の資料調査によって補っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目となる平成30年度は、初年度に引き続き、①新教育運動における「国際化」の進展の具体像を解明すること、②新教育運動における「郷土」形成論の特質を解明し、「郷土」と「国際化」の関係について検討すること、③新教育運動における「郷土」教育の実践を解明すること、の3つ課題に同時並行で取り組む。 その際、国内外における資料の収集と読解が主たる作業となるが、特に以下の2点に留意して研究を進めたい。第1は、初年度に英米独日の国毎にいくつか選定した研究対象(人物や学校)を、研究課題との適合性や資料の入手状況等を考慮しながら、より焦点化していくことである。「郷土」か「国際化」かのどちらか一方ではなく、「郷土」と「国際化」の両方に関連し両者の「相克」が論点となりうるような新教育の思想や実践を絞り込んでいきたい。第2は、国毎に研究を進めながら、比較史の立場から各国である程度適用可能な分析の枠組みや観点を見いだすことである。そのために平成30年度も電子メールでこまめに研究状況を報告しあうとともに、年3回の研究会を開催する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由はアメリカ及びイギリスでの現地調査に関するものである。 アメリカについては、2017年度は先行研究の整理をしたうえで、特定の人物または地域に絞って、アメリカ国内にある資料収集をするための訪米を予定していたが、ナショナリズム関連の先行研究が多いことと、相当の資料がPDFファイルとして日本国内から入手できたため、2017年度の渡米を見送った。繰り越した経費は、地域を絞った資料収集のための渡米に充てる。 イギリスについては、平成29年8月にイギリスに出張して調査研究を実施した。その際旅程の前半期間は、分担研究者として従事している基盤研究B(26282205)の研究費を使用し、旅程の後半期間は本科研の研究費を使用した。それゆえ当初、別個に研究を実施するべく短期間の渡英を2回行う予定であったが、一度の出張にて双方の研究課題に取り組んだため、渡航費が半額になった次第である。繰り越した経費は、未入手の郷土教育関連の資料収集のための渡英に充てる。
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Research Products
(5 results)