2019 Fiscal Year Research-status Report
近世・近代移行期における教育と宗教の関係―仏教者による教育活動の実態の検証から
Project/Area Number |
17K04554
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
梶井 一暁 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (60342094)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育史 / 僧侶 / 近世・近代移行期 / 宗教文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
宗教文化の形成や変化をめぐる中央本山と地方末寺の関係性について、学習者や知識人としての僧侶が切り結ぶネットワークや文化的環境の位相という関心から、歴史的考察を進めている。本年度は、東海地域と瀬戸内地域を事例に、江戸末期から明治初期にかけての僧侶の学問と教育の経験を検討した。そのための史料について、文書館所蔵のものの調査だけでなく、地方寺院所蔵のものも掘り起こし、宗教文化をめぐる中央と地方の関係性の叙述を、一次史料にもとづいて行うことに努めた。史料は文書が中心であるが、石碑や墓碑などの史蹟も一部調査した。 近世・近代の移行期は一種の社会経済的また価値文化的変動期であり、教育と宗教は未分化であるところに特色がある。僧侶が学校教師であったり、高等学校生が信仰を求めて学外にアイデンティティのありかを探ったり、教育と宗教は人間形成作用全体のうちに、ともにある。西洋と東洋という補助線をそこに引き入れても、教育と宗教の関係は相互的であるし、即応的である。 調査研究の成果の一部は、前近代の教育通史の記述のなかに、学習者ないしは知識人としての僧侶のありかたを位置づけ、若干の説明を行った。しかし、専門論文として成果を公表するにはいたっていない。 史料調査について、十分な機会と時間を確保することができなかったため、論述のための一次史料を、当初の予定どおりには収集できなかった。 引き続き、一次史料の掘り起こしを進め、実証性の高い論文の提出に努めたいと思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
史料調査について、当初の計画どおり、進めるにいたっておらず、研究の進捗はやや遅れていると判断する。専門誌に論文を発表するにいたっていない。 現在、旧備前国の日蓮宗寺院での史料・文献調査の実施を調整中である。社会情勢に留意しつつ、調査を計画したいと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
実証研究として一次史料を重視し、宗教史と教育史を架橋する記述を試みたいと、研究構想当初から一貫して考えている。しかし、コロナ禍の影響により、県外に実地調査に赴く機会が制約される状況がつづくことも想定されるので、実地調査で得られる一次史料にこだわりすぎるのではなく、文書館が公表するデジタル資料などの二次史料も活用し、研究の進捗を図りたい。 また、19世紀末以降、日本の近代化とほぼ併走して海外で蓄積される日本の宗教・教育に関する文化史的研究の検討も進めたいと思っている。海外の文献や史料の調査も、可能ならば計画し、研究成果の拡大と多面化を図りたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の計画通り、史料調査を実施できなかった。コロナ禍の影響により、調査の機会と時間を十分確保できなかったことが大きいが、史料所蔵者の代替わりにより、調査の再調整が必要になったことなどもある。 次年度は調査先(寺院や文書館)の選択を修正し、計画を実施に移したい。
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