2019 Fiscal Year Research-status Report
The role and problems of educational support for vagrant children: a life history of vagrant children in the late 19th century England
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17K04556
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三時 眞貴子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (90335711)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 児童福祉 / 虐待児の教育 / ライフ・ヒストリー / イギリス教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はプロテスタント系の男子校バーンズ校の出身者のライフヒストリーを描き、初年度に収集したカトリック系の女子校の資料を分析し、プロテスタントとカトリックの浮浪児(女子)の比較を行い、研究の成果を国際学会(History of Education in UKを予定)で報告し、学術雑誌『History of Education』に投稿することを計画していた。 残念ながらカトリック系の女子校の資料が、史料を保存している協会の意向で手に入れることができないため、カトリックとプロテスタントの浮浪女児の比較をすることができなかった。 一方で、バーンズ校の調査は順調に進んだ。バーンズ校は本校よりも残された資料内容が詳細ではないため、特に退校後の様子はわかることが少ないが、しかし学務委員会議事録と照らし合わせることで、それを補強することができた。 計画通り、これまで研究してきた成果を11月にロンドン大学で行われた国際学会(History of Education)で報告した。その際、マンチェスタ認定インダストリアル・スクールが、これまでの選挙研究がスキャンダル的に描いてきたような植民地への子ども移民をほとんど行うことなく、国内の労働者に育成するために教育し、就職斡旋を行い、退校後も彼らが働き続けることを支援し続けたことに質問が集中した。さらには、この貧しい子どもたちへの「支援」と考えられている活動が、実は支援者が養育責任を果たしていないと考えた保護者から、子どもを引き離して子どもを施設に入れていた点にも注目が集まった。議論を通して、家族は引き離されることに従順に従ったのか、子どもたちが学校から退校する時に家族はどのような対応をしたのかなど、重要な課題が出てきた。現在、報告と議論で得られた成果を5月末締め切りの学術雑誌『History of Education』に投稿する準備をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カトリックに関する資料が史料を保存する協会の判断で手に入れられなかった点は、予定していた研究遂行の障害となっている。おそらくは最終的にも手に入れられないといけないため、この点は計画の変更が必要である。とはいうものの、公文書館で保管されていた、退校後に子どもたちがカトリックのインダストリアル・スクールに宛てた書簡は全て手に入れることができた。この中で、手紙を出した時点の様子を書き入れている書簡があるのを見つけたため、次年度はそうしたものを用いて、少しでも退校後の様子を明らかにしたい。 一方で、プロテスタントの子どもたちのライフ・ヒストリーは順調に描けている。順調に生き抜いたように見えた子どもたちも、失業や病気など、何度も困難な状況に陥りながらも、インダストリアル・スクールのスタッフに支援されて、人生をつないでいた姿が浮かび上がった。 国際学会(History of Education での議論を通して、家族が脆弱で子どもたちを適切に養育することができないとみなされた家族が、自分たち抜きで子どもたちを社会に包摂することをどのように捉えていたのか、最も困難を抱えた子どもたちの養育と教育を考える際、子ども、家族、社会の関係をどのように捉えれば良いのかという重要な論点を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
カトリックの子どもたちに関しては、退校後に子どもたちがカトリックのインダストリアル・スクールに宛てた書簡の中で、手紙を出した時点の様子を書き入れている箇所を洗い出し、子どもたちの退校後の様子を明らかにするとともに、退校後に子どもたちがなぜ学校に書簡を出したのかを分析し、学校をさったのちの学校と子どもたちの関係性について分析したい。 また、学務委員会の議事録も参照しつつ、プロテスタントの子どもたちと学校との関わりと、カトリックのそれを比較することで、マンチェスタ全体としてのインダストリアル・スクールの支援のあり方を示す。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で予定していた出張が次年度に延期になったため。 次年度に延期された研究会出席のための出張費に充てる。
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Research Products
(2 results)