2017 Fiscal Year Research-status Report
日独における「教養」(Bildung) 概念の比較思想史研究
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17K04558
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
櫻井 佳樹 香川大学, 教育学部, 教授 (80187096)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教養 / Bildung / 日独 / 比較思想史 / フンボルト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日独における「教養」(Bildung)概念の比較思想史研究を通じて、18世紀末におけるBildung概念の成立・展開とその特質、並びに20世紀10-20年代日本の「大正教養主義」における「教養」概念の成立・展開とその特質を明らかにするとともに、両者の異同を明らかにすることを目的とする。 平成29年度では、まず第1の課題である「18世紀末に成立したBildung概念の特質を明らかにすること」に取り組んだ。中心となるのは、フンボルトのBildung理念の特質を解明することである。フンボルトのBildungに関わる主要著作「国家機能限界論」(1792)等の初期作品を取り上げ、フンボルトの陶冶理論を体系的に解明していった。その際、ベナー教授、コラー教授などの二次文献を参照しながら、とりわけ自我(個人)と世界の相互作用にBildung の本質を見ていった。そのために必要な文献購入や原書資料調査を国立ベルリン図書館等で実施した。ベナー教授やコラー教授にはその後日本で開催された教育哲学会等で面識を得、研究へのアドバイスをもらうことができ、今後の研究を進める上で大きな手掛かりを得た。 次に、第2の課題である「日本の『大正教養主義』における『教養』概念の特質を明らかにする」ための準備作業として、彼らに影響を与えた1910-20年代のドイツの精神状況を解明するために、ドイツ本国で資料調査を実施した。和辻哲郎、三木清、阿部次郎、倉田百三に影響を与えたニーチェ、ショウペンハウアー、ハイデガー等の基本文献、資料収集を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を進めるにあたり、まず重要なことは、フンボルトのBildung理念の特質を解明することである。そのため、フンボルトのBildungに関わる主要著作「国家機能限界論」(1792)等の初期作品を取り上げ、フンボルトの陶冶理論を体系的に解明していった。その際、とりわけ自我(個人)と世界の相互作用の中にBildung の本質を見ていった。フンボルトのテキストは難解であるため、研究者により様々な解釈が可能である。そのために幅広く文献を収集・読破することが必要である。今回実施した国立ベルリン図書館等での資料調査を通して、シェーファーの『人文主義的幻想後のBildungの問題』やシュレジンガーの『ヴィルヘルム・フォン・フンボルトのBildung論における疎遠なものや他者なるもの』など、重要な文献や貴重な資料の複写を入手することができた。それによってフンボルト解釈において、「他者論」的視点など新しい視点からの研究が可能になった。またシェーファー教授、ベナー教授やコラー教授などドイツ教育哲学会を代表とする研究者と交流でき、今後の研究を進める上で大きな手掛かりを得た。 また次に、第2の課題である「日本の『大正教養主義』における『教養』概念の特質を明らかにする」ための準備作業として、彼らに影響を与えた1910-20年代のドイツの精神状況を解明するために、ドイツ本国で資料調査を実施した。和辻哲郎、三木清、阿部次郎、倉田百三に影響を与えたニーチェ、ショウペンハウアー、ハイデガー等の基本文献、資料収集を実施した。これらを通して、「日本の『大正教養主義』における『教養』概念の特質を明らかにする」ための準備の一端が整ったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、まず平成29年度より着手した第1の研究課題を継続することによって「陶冶論から見た他者の問題」として研究成果にまとめる。それとともに、ドイツで収集した資料の読解を通じて、第2の課題である「日本の『大正教養主義』における『教養』概念の特質を明らかにすること」に取り組んでいく。西田幾多郎、和辻哲郎、阿部次郎、三木清、倉田百三などを取り上げ、彼らの著作を「教養」の観点から、読み解いていく。とりわけ第一次世界大戦後のドイツを直接訪れることによって、彼らは、ニーチェ、ショウペンハウアー、トルストイ、ハイデガーなどの実存主義思想やペシミズム思想の影響を受けたと考えられる。そうした仮説を検証し、大正教養主義の「教養」概念の特質を明らかにしていきたい。そのことによって、日本の「大正教養主義」が明確にドイツのBildung概念の影響下で形成されたこと、並びにその時代を色濃く反映したものになっていることを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
(理由)発注した図書が、品切れであったため、予算を計画通り使用することができなかった。
(使用計画)余った予算は次年度に繰り越して、図書費として使用する。
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Research Products
(1 results)