2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K04562
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Research Institution | Yamagata Prefectural Yonezawa University of Nutrition Sciences |
Principal Investigator |
安部 貴洋 山形県立米沢栄養大学, 健康栄養学部, 教授 (50530143)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生活綴方 / 北方性教育運動 / メディア / 国分一太郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、調べる綴方の実践、そして児童方言詩論争を通して国分一太郎の言語観・生活綴方理論の形成過程を明らかにした。 まず、調べる綴方実践の考察を通して国分と北方性教育運動、特に佐々木昴のリアリズム論との結びつきの必然性を明らかにした。調べる綴方は1930年代前半の綴方の主流であり、社会的、客観的であることを目的とした綴方である。国分もまた同時期調べる綴方の実践を行っている。この過程において国分は「何を書くか」から「なぜ書くか」、そして「いかに書くか」へと生活綴方に関する問題意識を変化させている。特に、「いかに書くか」への問題意識の変化は、主観と客観とを前提とする調べる綴方の理論的枠組みを問い直し、主観と客観とを含む表現方法への意識変化とつながっている。この変化が国分を北方性教育運動、佐々木昴のリアリズム論へと結びつける要因の一つとなっている。 また、児童方言詩論争の考察を通して1930年代半ばの国分の言語観を明らかにした。児童方言詩論争とは、方言詩を提唱する三上齋太郎に対して標準語を主張する福永等によって行われた論争である。児童方言詩論争は、従来方言か標準語かを巡る論争として、決着のつかないものとして捉えられてきた。だが、国分の三上批判はもうひとつの対立を明らかにする。もうひとつの対立とは言語観の対立である。三上と福永が言語を観念につけられた記号として捉えるのに対して、国分は言語を観念と物との浸透したメディアとして捉えているのではないか。児童方言詩論争を通してメディアとしての国分の言語観を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は北方性教育運動、平成30年度は児童方言詩論争、国分の生活綴方批判を通して国分の言語観・生活綴方理論の形成・変容を明らかにすることを予定としていた。 平成29年度は、国分の「概念くだき」の理論的変化を通して北方性教育運動における国分の言語観・生活綴方理論の変化を論文としてまとめた。 平成30年度は、まず児童方言詩論争に関連する文献の資料収集と考察を行った。そして児童方言詩論争を通して国分のメディアとしての言語観を明らかにした。また、生活綴方批判に関しては関係する文献の資料収集を行った。 この他に、村の子供に共感する国分の綴方教師としての資質と北方性教育運動とのつながりを明らかにするうえで不可欠となる国分の調べる綴方の実践、佐々木昴の影響を考察した。国分が調べる綴方を実践する過程での言語観・生活綴方理論の変化を考察し、2本の論文としてまとめた。また、佐々木昴関連の文献を取集し、国分との関係、国分への影響を考察した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成30年度に行った考察を論文としてまとめるとともに、国分の生活綴方批判に関係する資料収集を行い、生活綴方批判における国分の言語観・生活綴方理論の変容を考察する。 まず、平成30年度に明らかにした児童方言詩論争における国分の言語観、国分への佐々木昴の影響をそれぞれ論文としてまとめる。そして、研究会紀要等への発表を行う。 また、生活綴方批判における国分の言語観・生活綴方理論の変容過程を考察する。平成29年度、平成30年度の研究結果を踏まえ、心情的な側面から捉えられがちであった国分の生活綴方批判を理論的な側面から考察する。そのために引き続き資料収集、関係する研究会や学会等への参加を行う。
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Causes of Carryover |
健康上の理由から、予定していた資料取集、研究会等への参加ができなかったことによる。回復したことから、資料収集、研究会等への参加に使用する予定である。
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