2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04562
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Research Institution | Yamagata Prefectural Yonezawa University of Nutrition Sciences |
Principal Investigator |
安部 貴洋 山形県立米沢栄養大学, 健康栄養学部, 教授 (50530143)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国分一太郎 / 生活綴方 / 北方性教育運動 / 現実探求 / メディア / 児童方言詩論争 / 生活教育批判 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年評価されている国分一太郎の「現実探求としての生活綴方」の理論形成過程を明らかにするとともに、児童方言詩論争、生活教育批判を通して国分の言語観を明らかにすることを目的としている。 本年度は、まず綴方教師としての国分の資質が北方性教育運動にかかわるなかで理論化されていく過程を論文としてまとめた。民衆に共感する綴方教師としての資質は、国分が生まれ育った山形県東根の自然や人間関係のなかで形成され、北方性教育運動において「「僕達」意識」、そして子どものありのままを受け入れるリアリズム的教育実践へと理論的に深められていく。綴方教師としての資質が民衆に共感する姿勢にあること、そしてその資質が東根の自然や他者との関わりのなかで形成されていったことは多くの先行研究がすでに論じている。だが、この資質が北方性教育運動において「「僕達」意識」、リアリズム的教育実践へと理論的に深められていくことはこれまで論じられることはなかった。この点を明らかにした。 次に、児童方言詩論争を通して国分の言語観を考察し、国分一太郎「教育」と「文学」研究会で発表した。児童方言詩論争とは、児童詩における方言のあり方をめぐって三上斎太郎と福永晶爾との間で行われた論争である。方言を用いて詩を書くことを主張する三上と標準語を用いることこそが正しい国語教育であると批判する福永の論争は雑誌『工程』誌上、そして第二回北日本国語教育講習会立会討論会で行われている。討論会の司会として参加した国分は、生活との関係を問題にしていない点において三上と福永は同じ立場であり、問題は言語と生活の関係にあると主張する。この問題はこれまでの先行研究においてほとんど論じられていない。方言詩論争における国分の言語観、さらにこの言語観が北方性教育運動にかかわる過程で形成されたことを発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、平成29年度に国分一太郎の「現実探求としての生活綴方」の理論形成過程の考察、平成30年度以降に児童方言詩論争、生活教育批判を通した国分の言語観の考察を予定していた。この予定は、概ね達成できているということができる。 まず、国分一太郎の「現実探求としての生活綴方」の理論形成過程の研究に関しては、平成29年度に資料収集と考察を行い、考察結果の一部を国分一太郎「教育」と「文学」研究会で報告、また同研究会紀要で論文として発表した。平成30年度には論文2本を同研究会紀要、東北教育哲学教育史学会紀要に掲載した。平成31年度には国分一太郎「教育」と「文学」研究会紀要に論文を掲載している。 児童方言詩論争における国分の言語観に関しては、平成30年度に資料収集と考察を行い、平成31年度に国分一太郎「教育」と「文学」研究会で報告している。また、現在論文としてまとめている。 生活教育批判における国分の言語観に関しては、平成30年度以降に資料収集を行い、考察を行っている。ただ、国分の言語観をより明らかにするため他の北方綴方教師たちの生活教育批判を考察する必要が生じたことから、一年間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、児童方言詩論争、生活教育批判を通しての国分の言語観を論文としてまとめ、発表する。 現在、児童方言詩論争における国分の言語観を論文としてまとめている。ただ、児童方言詩論争において国分は自らの言語観を明らかにするよりも、主として三上と福永の問題点を指摘するにとどまっている。そこで、同時期に書かれた児童方言詩論争以外の国分の論考もあわせて考察している。この考察結果は、研究会等での発表を予定している。 生活教育批判における国分の言語観に関して考察をすすめるとともに、同時期の北方綴方教師たちの生活教育批判に関する文献の収集と考察を行い、研究会等での発表、論文として報告することを予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、購入必要な資料が予想よりも少なかったことと、新型コロナ感染拡大のため予定していた研究会等への参加をとりやめたこと等にある。 研究をより精緻なものとするために一年の延長を申請した。その研究のための資料購入と研究会等への参加のために使用する予定である。
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