2019 Fiscal Year Research-status Report
東アジア儒教圏の道徳教育と愛国心教育-日本の「特別の教科道徳」を考えるために
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17K04564
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山田 美香 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (90331610)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 台湾 / 香港 / 道徳教育 / 愛国教育 / 国防教育 / 中国 / 法治教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではアジアにおける戦後道徳教育を研究しているため、台湾・香港・マカオに資料調査に行くことで多くの資料を得ることができた。台湾大学図書館・国家教育院教科書図書館、香港大学図書館などで道徳教育に関連する資料を得た。第11回台日國際學術研討會「近現代東亞跨界活動與社會變遷」(山田美香,台湾淡江大学淡水キャンパス守謙國際會議廳,2019年9月6日)では、 「戰後台灣與日本的道德教育與生活指導・學生指導的關係(中国語)」の発表を行った。報告では、戦後台湾では道徳教育と生徒指導を一体化させ、教育界で道徳教育の在り方が絶えず議論された状況とは異なり、日本では1970年代以降道徳教育の議論もほとんど見られず学校内でも「道徳の時間」の存在が薄かったことを論じた。この違いは現在の台湾・日本の道徳教育が教科化されているのかどうか、また道徳教育に対する意識にも大きな影響を与えている。また「戦後台湾高校の国防教育と愛国心教育」(山田美香,教育史学会第63回大会,静岡大学,2019年9月29日)の報告では、道徳教育という概念だけでは台湾の状況を明らかにできないため、国防教育の視点で愛国心教育を論じた。その結果、道徳教育・国防教育のどちらもその時期の政治的な背景が大きく教育内容を決めることが明らかとなった。また名古屋市立大学で開催されたアジア教育学会第14回大会(2019年11月2日)では北京師範大学檀伝宝教授を招聘し、中国の新しい道徳教育の内容について講演をしていただいた。現在の中国では法治教育を強化するため、体系的に道徳教育と一体化させた教育を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のテーマである道徳教育について、台湾・香港・中国・マカオ各地の図書館等で徹底して資料収集をすることができた。現在資料収集の成果をまとめつつあり、関連する研究発表はコロナの影響もありできないこともあったが、基本的には計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はコロナの影響もあり現地調査などが難しい環境にある。しかし2019年度までに収集した資料によって論文を執筆することに専念したい。2020年秋以降現地調査が可能であれば、台湾・香港・マカオで再度調査をしたい。また、早い段階で「アジアの道徳教育」に関する書籍を自費出版できればと考えている。
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Causes of Carryover |
年度末にコロナの影響で調査等ができなかったことが理由である。翌年度後半以降、コロナの影響がなくなった場合、台湾や香港などの図書館・档案館の調査などを実施したい。
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