2023 Fiscal Year Annual Research Report
Functional transformation of educational evaluation in Germany with the secondary school reform from a three-stream to a two-stream system
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17K04568
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
卜部 匡司 広島市立大学, 国際学部, 教授 (30452600)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教育評価制度 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ドイツの教育評価制度の再編プロセスを解明したうえで、その制度の機能的変容を明らかにした。ドイツでは、これまでの三分岐型中等学校制度(基幹学校、実科学校およびギムナジウム)が、二分岐型の制度(ギムナジウムおよび非ギムナジウム系中等学校)へと再編されている。他方で教育評価制度は、三分岐型(就職資格、中級修了資格および大学入学資格)の修了資格を堅持している。 ドイツの教育評価制度の変容を観察すると、中等教育制度内での接続ルートを拡大する方向で再編が進み、どの学校からも大学入学資格の取得を目指せるようになっている。こうした状況をシステム論の視点で観察すると、これまでは成績評価による「良/否」が「進級/落第」に変換され、それがさらに基礎学校修了時の分岐点で各種の中等学校への振り分けに帰結した。そして「過去/未来」の区別で言えば、従来の評価は「過去」に焦点化されていた。さらに各段階の修了時の評価である「良/否」によって修了資格の「有/無」が決まり、それが次の進学や就職への「接続/切断」に変換された。それが教育評価制度の再編により、中等学校制度内での「接続/切断」のうち「接続」の側が拡大され、就学期間が弾力化されることで、「過去/未来」のうち「未来」に関心が向くようになった。また学習成果をより具体的に評価することで、評点と比べても「良/否」の適用対象が多様化し、その結果として評点による厳密な判定評価が相対的に後退した。しかし依然として「良/否」が「進学/落第」へと変換されることで、成績不良の場合の結果責任も本人に帰されると同時に、各学校種の学力水準も維持される。とするならば、ドイツの教育評価制度は、その三分岐型の基本構造を堅持することで厳密な評価そのものは維持しつつも、その機能を、分岐点での振り分け(ジャッジ)から目的地までの道案内(ガイド)へと変容させていると解釈できる。
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