2020 Fiscal Year Research-status Report
音楽教師の専門性と美的価値観形成のための音楽経験プログラム開発
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17K04569
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
古山 典子 福山市立大学, 教育学部, 教授 (10454852)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鑑賞 / 教師教育 / 音楽経験プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はCOVID-19の感染拡大は,これまで可能であった多くの音楽活動や大勢の人々が集まって音楽を鑑賞する機会の提供を阻害し,学校での音楽教育のあり方をも一変させるものとなっている。 学校の音楽科教育においては,合唱や合奏活動が制限され,他者とともに「音楽する」ことを阻まれる中で,音楽教育関係者たちは音楽科として何が行えるのか,またそれがどのような意味があるのかを問わざるを得ない状況に陥ることとなった。 本研究課題においても,さまざまな音楽経験,専門性をもつ小学校教師たちが音楽家とともに音楽を聴き,自分の感じ方に対峙し,さまざまな音楽の聴き方,感じ方を他者と共有する経験を教師教育として意味のあるものとして捉えており,その音楽経験プログラムを提供し,実施・検証することが困難となった。 これらの状況を踏まえて,感染拡大が一旦収まりつつあった2020年7月下旬に,コロナ禍の中で,公共ホールと地域の音楽家,小学校の音楽授業をオンラインで結ぶ,音楽鑑賞としての新たなスタイルでの実践事例として,熊本県の県立劇場と熊本市教育委員会,熊本大学による「ケンゲキオンラインスクール~音楽を聴こう知ろう~」の視察,ならびに関係者らへのインタビュー調査を行い,その意義について考察した。 また,本学教育研究交流センターの公開講座の一環として,ふくやま芸術文化ホール「リーデンローズ」館長の作田忠司氏,ならびに本学都市経営学部の池澤威郎准教授とともに,福山市における音楽文化振興について議論する,オンラインシンポジウムを開催した。このシンポジウムでは,公共施設としてのホールの現状や今後果たすべき役割等について,「リアル」「ポッシブル」「アクチュアル」「ヴァーチャル」を視点として「音楽を聴くこと」を考えるとともに,文化の継承・発展を経済的な視点から捉え,新たな可能性の提示を視野に入れた議論を展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,学校でのフィールドワークや小学校教師を対象とした音楽経験プログラムの実施が困難になったことから,研究が遅延している。とくに本研究課題では,小学校教師たちと音楽家が時間と空間を共有して音響を共に聴く形で音楽鑑賞を行うこと自体に意味を見いだしており,その音楽経験プログラムを実施・検証が行えなかったことで,研究そのものが停滞せざるを得ない状態に陥っている。 また,大学教員としても,教育活動全般のオンライン化への対応に集中せざるを得ず,研究に費やせる時間が十分になかった点も遅延の理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大によってフィールド調査が全く行えず,また教師教育として音楽経験プログラムの実施が必要であったもののそれも困難であった。 本来,本課題では,教師と音楽家が時間と場を共有した状態で音楽鑑賞を行う,という音楽経験プログラムの提供とその実証を目的としていたが,感染防止の観点から移動が困難であり,施設への入構が憚られる状況にある。通信状況や音質の観点から,オンラインで実施することについては課題も多く,なおかつ従事している教育活動において,現在通常とは異なる対応を迫られており,時間の確保が難しい。しかし,今後も短期間での感染症拡大の状況改善が見込めないことから,オンラインでのプログラムの開催を検討したい。これは,当初の計画とは異なるものの,オンラインでの開催によって,オンラインで可能なことと課題を明らかにできる可能性がある。同時に,時間と空間を共にしながら音楽を聴くという,本来この課題で目指していた音楽鑑賞の方法の意味が,より明確になるように思われる。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大により,当初の研究計画で予定していた音楽経験プログラムが実施できなかったため,旅費や人件費・謝金の支出が計画通りに進んでいない。 2021年度も感染拡大に改善が見られない見込みであるが,オンラインでの音楽経験プログラムの実施を計画する予定である。それに伴い,音楽家への謝金,使用機器やソフトの購入を見込んでいる。また,オンラインでの音楽鑑賞プログラムを実施・検証するために,オンライン配信での音楽鑑賞に取り組んでいる専門家(国立音楽大学 瀧川淳准教授を予定)に協力を依頼し,研究を進めることとする。
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