2018 Fiscal Year Research-status Report
戦後教育学における「近代」評価の再検討―1960年代初頭までの梅根悟を中心に
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17K04581
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
下司 晶 日本大学, 文理学部, 教授 (00401787)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教育学 / 教育哲学 / 教育思想史 / 近代 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の教育学はポストモダニズムを受容したために、教育が目指すべき方向を語ることが困難になったといわれる。申請者はこの説を検討するために、日本の教育学のポストモダニズム受容を開いなおしてきた。しかしこの研究を通して、ポストモダニズム以前に、戦後教育学における「近代」の位置づけを改めて検討する必要が生じてきた。そこで本研究では3年計画で、戦後教育学の近代受容を改めて問いなおすことにした。戦後の西洋教育思想史研究は、講座派マルクス主義や市民社会派の強い影響を受けながら西洋近代を規範として論じることによって、日本の教育が目指すべき方向性を語ってきたからである。 平成30年度で、研究機関3年間のうちの2年目が終了した。主たる成果は下記の通りである。 第1に、日本と西洋における近代的な教育思想史観の誕生を問いなおした。近代教育をどうとらえるか、そしてどのような教育観によってどのような教員を育成するかということは重要な問題である。その際、教育史が近代をどのように描き、それを教員志望者にどのように伝えるのかという問題が生じる。 第2に、戦後の教育学における理論/実践問題を検討した。戦後の教育学は、当初目指すべき方向性が明確であり、啓蒙的な役割に疑念がなかった。背景として西洋近代がモデルとされたからである。しかしポストモダン論をはじめとする西洋近代への懐疑を背景に、理論が実践を主導するという問題枠組みに変化がしていることを論じた。 第3に、現代的課題の背景にある近代教育像を問いなおした。特に現在着目されているアクティブラーニングなどは、近代教育の理想の帰結の一つである秦教育思想が現代にも影響を与えている例といえる。戦後教育学者の近代観と関連づけて、現代の教育課題を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画段階の予定とは切り口は若干異なるものの、予期していたのとほぼ同等以上の成果が出ている。 当初の計画では、戦後初期の梅根悟が、 当時導入されつつあった「新教育」の推進者として、「近代」をどのように理解したのかを検討することとしていた。その際のテクストとしては、戦後間もなく、教員へのメッセージとして出版された出版された『新教育への道』(1947)を中心とする予定であった。しかし研究の進展によって、梅根が戦後の教員養成改革の在り方について意見するなかで、近代的な教育観に直接に言及する意見する資料などが発見されたため、教員へのメッセージにおける近代から、教員養成における近代に問題をシフトし、同じ近代問題を別の角度から描き出すこととした。以上が29年度ので成果である。 30年度は上記成果を踏まえて、戦後教育における近代を三つの観点から検討した。それは第1には、日本と西洋における近代的な教育思想史観がどのように生まれたかについてである。この問題は教員養成の問題とも関連する。近代を理想化し、その継承者としての意識を教師に与えるからである。第2に、戦後の教育学における理論/実践問題を検討した。戦後の教育学において目指すべき方向性が明確であったのはモデルとしての西洋近代に揺らぎがなかったからである。しかし現代では啓蒙的な、理論が実践を主導するという問題枠組みに変化がしていることを論じた。第3に、現代的課題の背景にある近代教育像を問いなおした。特に現在着目されているアクティブラーニングなどは、近代教育の理想が現代にも影響を与えている例といえる。戦後教育学者の近代観と関連づけて、現代の教育課題を検討した。 梅根悟関連資料については和光大学梅根悟記念図書館に御協力頂いた。成果は学会発表や論文等のかたちで発表した(別掲)。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、2019年6月に日本大学文理学部で開催予定の日本大学教育学会一般研究発表において、梅根悟に関する研究を報告する予定である。発表内容は日本大学教育学会の学会誌『教育学雑誌』に投稿予定である。 第2に、8月に商業出版の媒体で日本の教育哲学における近代受容を出版予定である。 第3に、2019年9月に立教大学で開催が予定されている教育思想史学会コロキウムにて、近代教育における理論-実践問題に関して発表する予定である。発表内容は推敲した上で、機関誌『近代教育フォーラム』に投稿予定である。 第4に、2019年10月に広島大学で開催予定の教育哲学会において、教育学・教育学研究者にとっての「西洋」の意味について考える企画を開催予定である(形式未定)。 第5に、2019年12月に香港大学で開催されるPESA(Philosophy of Education Society of Australasia)において、戦後日本における近代受容に関して報告予定である。発表内容は遂行の上、論文化する予定だが、投稿誌は現在検討中である。
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Research Products
(4 results)