2017 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるカリキュラム開発の回顧と展望ー関係する「資本」に注目してー
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17K04593
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
矢野 裕俊 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (80182393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 和喜雄 奈良教育大学, 教職開発講座, 教授 (00225591)
木原 俊行 大阪教育大学, 連合教職実践研究科, 教授 (40231287)
田村 知子 岐阜大学, 教育学研究科, 准教授 (90435107)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カリキュラム開発 / 学校を基盤としたカリキュラム開発 / 研究開発学校 / 教育課程特例校 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、まず本研究のための背景となる情報を得るために、カリキュラム開発に関するアメリカ合衆国をはじめとする諸外国の動向を調査し、学校を基盤としたカリキュラム開発が国家レベルの統一的なスタンダードの設定とそれによる規制の動きのなかで、学校が強力なアセスメント体制に組み入れられ、全国的な平準化が進む新たな局面を迎えていることを確認した。その成果は、日本カリキュラム学会第28回大会の課題研究で、「NCLB法下の米国でのカリキュラム改革と公教育の動向」と題して発表している。 年度の後半には、研究分担者、連携研究者、研究協力者との意見交換を踏まえて、年度末に研究会を開催し、あらためて研究調査の役割分担を明確にし、具体化を図った。それにより、まず本研究におけるキー概念である「専門職資本」についての共通理解を深めるために、セミナーを研究分担者からの話題提供により開催することとした。次に、日本における「学校をベースとしたカリキュラム開発」のこれまでの展開を概括的に把握する枠組を設定し、学習指導要領一般編(試案)が出された時期、学習指導要領が国の基準として告示されてからの時期、「学校を基盤としたカリキュラム開発」という考え方が日本に導入され、ほぼ同時に文部省により研究開発学校制度が設けられた時期、学習指導要領の改訂により「総合的な学習の時間」が設けられた時期、教育課程特例校制度が設けられた時期に分けて、日本におけるカリキュラム開発を歴史的に概括することとした。 また、研究開発学校などにおける現在のカリキュラム開発の事例を収集し,それに見られる特徴を明らかにするとともに、研究開発学校としての実績を有する学校の訪問調査の計画を具体化した。 これらにより、次年度の本格的な研究調査のための準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、研究の方向性と具体的な研究計画の策定を行い、あわせて研究代表者・研究分担者の間で役割分担を行うための研究会を遅くとも9月までに開催する予定であったが、研究代表者の諸般の事情により、研究会の日程調整ができず研究会が延期された。 その間は各研究者が本研究課題を意識しつつ、個別に研究に取り組んだが、本研究課題の進捗という点では、成果を集約することができなかった。しかしながら、メール等による連絡によって、本研究課題を進めるうえでの各研究者の役割についても,現実的な研究計画のレベルで合意を形成することができた。年度末の3月には研究会を開催し、研究分担者のみならず研究協力者にも集まってもらい、より現実的で有意義な研究計画に手直しすることができた。 総じて、本研究の進捗はやや遅れていると言わざるを得ないが、平成30年度当初からの研究調査の推進のための体制は構築されており、今年度の研究計画を遂行することにより、当初の研究計画で設定した目標レベルに到達することが十分に可能だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、研究代表者と研究分担者に加えて,連携研究者と研究協力者にも研究のテーマを受け持ってもらい、①主として文献によって日本のカリキュラム開発を回顧的に概観すること、②現在カリキュラム開発に取り組んでいる学校における開発の内容をいくつかの視点を設定することにより分類整理すること、③事例研究の対象として選んだ小学校(中学校)への訪問調査のための聞き取りのためのフレームワークの作成、④対象校への実際の訪問調査、などを今年度に実施することを決定している。これら4点を並行的に行い、文献的研究手法と事例に関する質的調査研究の手法とを組み合わせることにより、立体的な研究の推進を展望している。 そうした研究を計画的に進めるために、今年度にはすでに研究会を開催しており、引き続き6月、7月および9月以降にも研究会を開催するべくすてに日程を決めている。
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Causes of Carryover |
本研究課題では、全研究費の中で旅費が占める割合が比較的高いにもかかわらず、研究者の間での連絡調整に手間取り、当初の研究計画では当該年度に実施の予定であった、事例として取り上げる研究開発学校等の訪問調査が結果的にできなかったために、当該年度の旅費の使用がほとんどなかった。今年度は、事例として取り上げる学校の実地訪問調査を行うとともに、研究会の開催をより頻繁に行い、国際学会での発表も予定しているため、旅費の使用が大きくなる見込みであり、平成30年度については次年度使用額が大きく残ることはない。
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