2018 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるカリキュラム開発の回顧と展望ー関係する「資本」に注目してー
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17K04593
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
矢野 裕俊 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (80182393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 和喜雄 奈良教育大学, 教職開発講座, 教授 (00225591)
木原 俊行 大阪教育大学, 連合教職実践研究科, 教授 (40231287)
田村 知子 大阪教育大学, 連合教職実践研究科, 教授 (90435107)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カリキュラム開発 / 研究開発学校 / 専門職資本 / 人的資本 / 社会関係資本 / 意思決定資本 / 学校のエートス |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は研究第2年次であり、年間に計5回の研究会を開催し、2018年12月にはオーストラリア・メルボルンで開催された第6回国際カリキュラム研究学会(International Association for the Advancement of Curriculum Studies)において、研究発表を行った。 研究会では、A. HargreavesとM. Fullanの共著(2012)、Professional CapitalおよびHargreaves(2012)のThe Global Fourth Way:The Quest for Educational Change、Fullan(2016)のThe New Meaning of Educational Changeを手がかりに、Professional Capital(専門職資本)についての概念的理解、その概念が生成されたいきさつ、日本の学校への適用の可能性などについて検討した。その結果、カリキュラム開発をとおして形成される教師の文化や学校のエートスは、教師のProfessional Capitalという概念で把握することが可能であるという確証を得ることができた。 他方、この概念に基づいたインタビューガイドを作成し、研究開発学校としての実績をもつ4校(3小学校と1中学校)に訪問調査を実施した。調査により明らかになったことは、研究開発学校として行ったカリキュラム開発の経験を通して、校長の交代や教職員の人事異動があるにもかかわらず、教師のProfessional Capitalの形成・蓄積され、それが持続可能なカリキュラム開発を支えていることであった。また、そうしたCapital(資本)は教師の関係性を強化し、個々の教師の指導力を高め、学校でのボトムアップの意思決定を支えていることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に実施した5回の研究会により、当初より計画していたProfessional Capital概念の検討と、日本の学校へのそれの適用可能性についての検討を行った。それにより、Professional Capital概念の輪郭とそれを構成する3つの資本(人的資本、社会関係資本、意思決定資本)の相互関係についての共通理解を得ることができた。 また、研究開発学校におけるカリキュラム開発に注目し、研究開発学校制度がもつ特徴とともに、その制度により各学校にもたらされた成果を、Professiona Capitalという概念を用いることにより確認することが可能であるとの見通しを得た。実際に研究開発学校を経験した4つの学校に対する訪問調査により、研究開発学校としてのカリキュラム開発の経験が当該の学校と教師に何をもたらしたのかを、Professional Capital概念によって説明することを試みた。その中間的な成果は2019年6月に行う学会発表によって集約する予定である。 ただ、海外の学校の訪問調査によって、カリキュラム開発とProfessional Capital形成との関係を確認することまではできず、それについては文献研究によって補うこととしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は2019年度が最終年次であり、2019年度には研究成果のまとめに取りかかる予定である。そのために行うことは次の3つである。まず第1は、英米の学校教育の文脈のなかで生まれたProfessional Capital概念を、日本の現実を解釈するためのツールとして利用することを展望して、その概念を日本の学校教育の文脈に即して再構成することである。 第2には、日本の学校に対する追加的な訪問調査を行い、カリキュラム開発をとおして学校と教師が獲得したものをCapitalとして整理するためのデータを補強することである。そして第3には、本研究課題の総まとめとして、得られた知見の公表を、できれば出版のかたちで行うことである。
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Causes of Carryover |
国内調査に参加することが難しく、また国際学会での発表に参加することができなかったために、分担金を未使用の状態で研究第2年次を終えることとなった研究分担者が1名いるが、研究最終年次には国内調査のために物品費、旅費、謝金等によって使用する見込みである。
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