2017 Fiscal Year Research-status Report
イギリス新教育における「女子・女性教育論」とジェンダーに関する思想史的研究
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17K04594
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Research Institution | Fukuyama Heisei University |
Principal Investigator |
山崎 洋子 福山平成大学, 福祉健康学部, 教授 (40311823)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イギリス新教育運動 / 女子教育 / ジェンダー / フィンレイ=ジョンソン / ヒューズ / トランスカルチュラル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、19世紀末から1910年代までのイギリス新教育における女子・女性教育に関する教育言説(国家・社会へのメタ言説を含む)のズレ、包含・包摂、相互補完・連関の重層性を明晰に浮き彫りにし、そのことによってイギリス新教育運動全体を二項対立図式ではない形で再構成することにある。具体的には、トランスカルチュラルな視点を投入しながら、新教育を実践した2人の女性教育家、ジョンソン(Finlay-Johnson, H. 1871-1956)と ヒューズ(Hughes, E.P. 1851-1925)に着目し、前者では子ども観・教師の専門性(教師の技法・評価法・各教科教授法)・遊び論に潜在する性意識・権利意識等を、後者では、女子教育論・授業・各教科(3R’s、裁縫、道徳、英語、理科、体育、図画等)に潜在する性意識・権利意識等を考察し、イギリス新教育における「女子・女性教育論」をジェンダーの枠組みで解明することにある。研究開始1年目は、ジョンソンの邦訳版が大正12年にニイル研究者の霜田静志訳で刊行されていることを突き止めたことから出発した。まず、それを入手し、英語版・日本語版双方を遡上にのせて、ヴィクトリア的女子教育の文脈を意識しながら女子教育言説を抽出し、さらに、ヒューズの愛弟子であった安井てつの諸論考を雑誌『婦女新聞』(1號 の明33年から昭和5年まで)から抽出し、ジェンダー・バイアスの観点で類型化することに着手した。また、同時に、霜田静志による女子教育理解をイギリス教育史学会50周年記念大会において‘An Eastern progressive: Seishi Shimoda as a conduit of innovation between UK and Japan’と題して研究発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の前期に国内でかなりの時間を費やして第一次史料収集を行うことができ、また海外研究協力者との研究会も順調に開催することができたため、国際学会での発表が実現し、さらにスペインの教育史学会刊行論集への投稿論文Space and Time in the Creative Curriculum:Drama and education in two island nations in the early twentieth centuryも採択が決定した(平成30年6月刊行)。それゆえ、本研究は、おおむね順調に伸展している、と自己評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として重視すべきは、近年のジェンダー研究において考慮されている「トランスカルチュラルな視点」をどのように用いて、抽出した言説に考察を加えるかということである。このことに関しては、海外研究協力者であるJoyce GoodmanとPeter Cunninghamの研究知見を得ながら、潜在的カリキュラム、ジェンダートラッキングを意識しつつ検討する必要がある。そこで、平成30年8月には渡英し、未収集の第一次史料を探索し、海外研究協力者と研究会を実施する。また9月には、Cunningham氏を日本に招聘し、フレーベル国際学会で発表する。そのテーマは、ヒューズ来日時の講演と彼女の愛弟子の安井てつによるイギリスの幼児教育視察を俎上に載せたものであり、両者の幼児教育思想にどのような女子教育観があるかについて解明したものである。また、10月以降には、これまでの解明点を再度、整理し、平成31年度の学会発表を念頭におきながら、研究を進める。以上の研究計画と推進方策にもとづいて、平成30年度の研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、平成29年度末から平成30年度初めに、いわば「年度をまたいで」海外研究協力者を招聘して研究推進に取り組んだためである。それゆえ、平成30年度使用持ち越し額の225,742円については、平成30年4月の時点で既に使用済みである。
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Research Products
(4 results)