2019 Fiscal Year Research-status Report
A comprehensive study on the construction and improvement process of the national education system in Nepal.
Project/Area Number |
17K04595
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Research Institution | Seitoku University Junior College |
Principal Investigator |
中村 裕 聖徳大学短期大学部, 保育科, 准教授 (90572165)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教育制度 / ネパール / 国民統合 / 教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、王政復古後初期(1950~1970年代)のネパール王国(Kingdom of Nepal. ネパール)における国民教育制度の構築および整備過程を総合的に明らかにすることである。 この目的を達成するために、2019年度においては、トリブヴァン大学(Tribhuvan University) 附属図書館および同大学附属の教育改革・開発研究センター(CERID)、アメリカの国際開発庁(USAID)などを通じて、本研究の基盤資料(教育計画および政策文書、対ネパール教育援助に関する文書など)の入手を図った。 上記の資料収集と並行して、本研究上の主要作業として1971年の「『国民教育制度』計画」(NESP)の背景解明を試みた。具体的には、1960年代後半のネパールにおける国民教育制度整備上の課題について、二つのユネスコ教育調査団報告書(草稿)、二つの経済開発計画を対象にして、教育を通じた国民形成や教育の普遍化に留意しつつ追究した。 この追究を通じて、以下のことが明らかになった。これまでの成果、たとえば1950年代の「ネパール国家教育計画委員会」(NNEPC)報告書や1960年代の「国家教育審議会」(ARNEC)報告書における国民概念を踏まえれば、上記の四文書において教育によって形成されるべき「国民」とは、主に「職業人」「労働者」ということになる。他方で、民主主義国家を担う市民や、多様な能力を有する個人などについては上記の文書において明確に言及されていない。一般に、1962年憲法の下で「公式の」「ネパール文化」が醸成されていったと解されているが、今後は、こうした通説を具体の資料に基づいて検証していく必要がある。 以上の成果は、聖徳大学短期大学部『研究紀要』52号に研究論文として掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連資料の収集・講読作業は順調に進んでいる。また、それに並行して、上記の通り学術論文を一本執筆し発表した。ただし、新型コロナウイルス感染症の蔓延にともない、予定していた現地での調査は実施できなかった。また、同じ理由で協力者に依頼している文献データベースの作成も遅延しているが、これは下記の通り対応可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、これまで通りの活動を継続する。すなわち、①研究に関する史資料の収集と講読、②その集成と成果としての発表である。特に②については、引き続き、これまで手薄であった1970年代における教育計画の総合的追究と、教育計画における国民概念の変遷に焦点を当てて活動する。 2019年度において予定通り進捗しなかった作業について、文献データベースの作成は、協力者数を増やすことで対応する。現地調査については、新型コロナウイルス感染症をめぐる動向を注視しつつ、状況によっては代替措置を一考せねばならないと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最大の要因は、新型コロナウイルス感染症の蔓延にともない、予定していた現地での調査が実施できず、旅費を多く支出しなかったことにある。また、既収集資料のデータベース化にともなう人件費も、同じ理由で2019年度内に作業が終了せず、同年度において支出できなかった。 文献データベースの作成については、協力者数を増やすことで対応し、2020年度において人件費として支出する。現地調査にともなう旅費支出については、新型コロナウイルス感染症をめぐる動向を注視しつつ、状況によっては代替措置をとる。
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