2017 Fiscal Year Research-status Report
フランス及びスイスにおける幼小接続制度の論理と課題に関する研究
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17K04604
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤井 穂高 筑波大学, 人間系, 教授 (50238531)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 幼児教育 / 義務化 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の本研究の初年度の当たる本年度は、フランスにおける幼児教育の義務化の施策と論点を検討した。本研究は幼小の接続制度をテーマとしているが、スイスにおいては4歳児からの義務化が進み、フランスにおいても義務化の動きが出てきており、義務化を前提とするか否かは、接続制度の在り方に大きな影響を与えるからである。 フランスでは、義務教育の開始は6歳の小学校入学からであるが、すでに3歳から保育学校への就学がほぼ100%であった。にもかかわらず、その義務教育化の議論が度々行われている。サルコジ保守政権下の2007年にベントリラ報告が出され、満3歳からの就学義務を課すことによって、保育学校を小学校とは異なる「独自の」学校としてではなく、小学校と「同等な」学校とすべきと提言している。これと同時に、言語の習得を最優先の課題として、3年間の年齢ごとのカリキュラムと各年齢に応じた進度の詳細を示すことを求めていた。 一方、2012年に誕生したオランド社会党政権では、保育学校への就学保障の強化を求める法案が社会党議員団からたびたび提出されている。たとえば、「3歳からの就学義務の確立をねらいとする法案」(2011年4月15日付)の趣旨説明によると、最近の国際調査はフランスにとって厳しい内容であり、社会的不平等よりも学校内での不平等の方が大きいことを示しているとしたうえで、こうした文脈の中で保育学校は、より幼い子どもを、特に過疎地や都市部困難地域において受け入れることにより、社会的不平等の縮減において主要な役割を演じることができるとしてその義務化を求めている。 そして、2017年3月には現在のマクロン大統領が2019年度より、義務教育の開始年齢を3歳に引き下げることを発表した。法案等の審議は次年度になるが、義務化の論理に含まれる幼小の接続関係について、次年度も引き続き検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はフランス及びスイスにおける幼小連携制度を対象とするものであるが、本年度はフランスに対象を限定した。その理由は、フランスにおける施策の動向が急であることによる。スイスについては前科研により義務化については一定の研究成果が上がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に当たる次年度には、フランス等の学習期に関する理論の検討と、スイスの基礎期の教育学的根拠の解明を行う。 (1)学習期に関する理論の検討 フランス等では複数学年による学級編制も珍しくないこともあり、幼小接続期の学習期のみならず、学習期全般に関する研究も蓄積されている(たとえば、Kahn, A la recherche du cycle perdu, éditions ANRT, 2009.)。これに対し、厳格な学年・学級制を採るわが国では、先行研究もほとんどない。そこで次年度は、計画の柱の1つに学習期に関する理論的研究を位置づけ、先行研究を総合することにより、学習期という仕組みの意義とともに、それを幼小の接続期に適用する具体的な有効性を検討する。 (2)スイスにおける基礎期導入の教育学的根拠の解明とそのための事例検討 スイスの場合、スイス教育長会議において全会一致で採択された合意であっても、その実施は各州において個別に検討され実施に移される。基礎期についても同様であり、このため各州において、試行が実施され、その際に基礎期の効果についても検証されている。この点はフランスにはない特徴であり、そうした調査報告書から、基礎期導入に至る教育学的な根拠を明らかにする。
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Research Products
(3 results)