2019 Fiscal Year Research-status Report
Legal and Empirical Analysis on "High Stakes" Teacher Evaluation Law in the United States
Project/Area Number |
17K04605
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高橋 哲 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10511884)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 「人事直結型」教員評価 / 学力テスト / テニュア / ニューヨーク市学区 / 教育財政 / トランプ政権 / 働き方改革 / 給特法 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる予定であった2019年度は、以下のように、昨年度までの研究成果を複数の書誌での公刊、および、学会発表によって実施した。 第一に、教員評価制度の比較研究の観点から、アメリカの「人事直結型教員評価」の日本への移入状況に関する研究成果を国際学会にて発表した。近年、比較教育学の分野では、いわゆる「PISA型学力」みられるような国際機関の国内教育政策への影響に関する研究が盛んにおこなわれているが、教員評価制度にみるならば、アメリカの人事直結型教員評価(high stakes teacher evaluation)が、漸進的に日本においても導入されていることをみることができる。また、PISA型学力等の教育過程への移入が文部科学省の主導によって行われてきたのに対して、これらの教員評価の導入は、内閣府や総務省など非教育行政機関が推進する「人事評価制度」によって導入されていることが明らかとなっている。本研究では、他の教育政策領域からみた、教員評価制度の政策移入の特徴を、対象モデル、移入する主体、実施手法の違いから検討を行った。この研究成果については、国際学会であるWorld Education Research Associationの10th Focal Meeting(2019年8月)において口頭発表を行った。 第2に、教員人事の日米比較の観点から、教員の「多忙化」の法的要因となっている「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与に関する特別措置法」の解釈、運用に関する分析を行い、複数の書誌に研究成果を公開した。2019年12月4日には、同法が改正され、「上限時間指針」の新設、ならびに、「一年単位変形労働時間制」の条例による導入がはかられたことから、その法的分析に関する論考を近日中に公刊する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、初年度に行われた制度運用の実態に関する追加調査を行うことを予定していた。具体的には、1年目の調査において解明できていない、以下の2点に関する調査、すなわち、第一に、教員評価項目の一つとされている「教員観察」の運用実態に関する調査、第二に、州統一学力テストの対象とされていない教科や学年を担当する教員の評価に関する調査を予定していた。前者においては、教員観察の主体が誰であり、また、どれだけの頻度でどのくらいの時間をかけて行われているのか。また、授業観察において示された所見を教員評価や人事に如何に反映しているかを明らかにすることを目的としている。後者に関しては、連邦法による州学力テストの義務づけが、第3学年から第8学年までの数学と国語に限定されているため、学級担任制をとる小学校低学年や、テスト外教科を担当する教員を如何に評価しているのかを分析することを予定していた。 本年度の調査においては、ニューヨーク市第5学区の公立小学校の校長へのメールによる予備調査を行い、同校での運用実態についての情報を得ることができた。これをもとに、2020年3月に現地にて、他の公立学校や教育行政関係者にインタビュー調査を行う予定であったが、次項にも示すように、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う渡航規制により実施することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
先にみたように、当初の研究計画においては「人事直結型教員評価」の運用実態に関する追跡調査を行うため、米国ニューヨーク市第5学区の公立学校、ならびに、学区教育委員会へのインタビュー調査等を2020年3月に実施することを予定していた。しかしながら、米国内における新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、外務省による渡航規制が行われたことから、年度内の調査を中止せざるをえなかった。このため、執行年度を1年間延長し、次年度に現地での調査を実施することとした。感染症の拡大状況によっては、翌年度の実施も困難な可能性があるため、インターネットツールを活用したインタビューを行う事で、調査を実施することも検討している。
|
Causes of Carryover |
、米国内における新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、外務省による渡航規制が行われたことから、年度内の調査を中止のうえ、次年度に延期せざるをえなかったため。
|
Research Products
(12 results)