2017 Fiscal Year Research-status Report
社会インパクト債(SIB)活用による教育財源調達の新展開
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17K04619
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高見 茂 京都大学, 白眉センター, 特任教授 (60206878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 健 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), その他 (20626973)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | SIB(社会貢献債) / ソルトレーク / 就学前教育 / ユタ高品質就学前教育プログラム / Pay for Success / United Way of Salt Lake / 不登校児童・生徒 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際担当の研究代表者の高見は、社会貢献債(SIB)関係の資料収集を進め、世界各国における教育部門への適用事例について検討した。その中でも取り分け効果的だったのが、米国における就学前教育への適用であった。ユタ州ソルトレーク市やイリノイ州シカゴで実際に適用された事例が観察された。 本年度は、30年度計画の一部を前倒しし、SIBと親和性の高いSIBの事業スキームを具体的に抽出し、関係機関へのヒアリング調査を先に実施することとした。候補地として、米国で最初に教育部門にSIBを適用したユタ州ソルトレーク市を取り上げ、現地調査を実施した。同市では、ユタ高品質就学前教育プログラム(Utah High Quality Preschool Program:以下UHQPP)の導入によって、教育環境に恵まれていない低所得状況の子ども達に早期教育機会を提供し、就学後の特別支援教育クラスに入る子どもの数を抑制することを推進していた。プログラムの資金は、SIBを通じて集めたゴールドマンサックス、プリツカ―財団からの資金、州からのからの資金からなり、それらが中間組織(Uited Way of Salt Lake)を通じて経済的に厳しい家庭の就学前教育費として支援される仕組みであった。成果についてはユタ州の標準的なテスト(Peabody Picture Vocabulary Test)の結果で判定され、抑制に成功した場合、SIB投資に対して1人当たり2470ドルの元利償還が予定され、プログラムは成功している状況であった。 他方高等教育、生徒指導のSIB適用の調査担当の伊藤は、不登校児童・生徒に対するSIB適用可能性につて検討した。大阪府池田市で実践されているサポートプログラムの制度設計に参加し、SIBの適用結果の評価方法について検討を重ねた。実施可能な評価方法を具体的に提示できるところまで到達している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度計画は、研究代表の高見は、i)就学前教育、ii)初等教育。iii)中等教育、iv)高等教育、v)生徒指導(進路指導)へのSIBプロジェクト導入事例の調査・資料収集を担当することになっていた。資料収集についてはインターネット等で検索し、ほぼ当初の計画通り進めることができた。またSIB導入のねらい・目的、効果、財源節約効果、教育権保障の確保について、教育行政当局対象の質問紙調査を担当予定であったが、米国ソルトレーク市でのヒアリングで概ね達成している。またプロジェクト推進母体についても、United Way of Salt Lakeへのヒアリングを実施することによって実情把握ができた。SIBプロジェクトの評価の仕組み、評価機関についても判明し、今後さらなる調査を進める予定である。 他方研究分担者の伊藤の平成29年度の担当課題は、SIBの効果測定手法、政策効果測定手法、評価基準の構成要素の解明であった。大阪府池田市の市当局との連携による不登校児童・生徒へのケア措置へのSIB適用の試行プログラムの効果測定手法の検討を通じて、いくつかのSIB成果測定の試行モデルを開発する成果を上げた。
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Strategy for Future Research Activity |
評価機関、SIB投資資金の調達先・具体的な投資家、教育面への投資による社会貢献に対する投資家の意識についての調査が手付かずであるので、そこを重点的に調査研究を進めたい。また30年度の課題である英国の中等教育における成績向上と中退防止プログラム(ランカシャー)、ポルトガルまたはインドの初等教育プログラムへの適用事例(リスボンまたはラジャスタン)についてのできれば現地調査を実施する予定である。また研究分担者伊藤は、引き続きSIBの成果測定手法、政策効果測定手法、評価基準の構成要素の解明に努め、英国、米国、イスラエル、ポルトガルの投資ファンドと評価機関についても調査研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の高見については、39,937円が次年度使用額となった。当初、文具類、メモリースティック等の消耗品の購入を予定していたが、過去に購入した物を再活用する等、予定していた購入を取りやめたため残額が生じた。新年度の消耗品の購入に充てたい。研究分担者伊藤の残額は、113,355円となっている。これは国内旅費、打ち合わせの交通費として計上していたものだが、別の経費で交通費を充当したことによる残額の発生である。新年度の国内調査旅費、あるいは新年度は外国調査を計画していることもあり、その一部として海外調査旅費に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)