2018 Fiscal Year Research-status Report
学校予算の適切性の検証と算定方法に関する開発的研究
Project/Area Number |
17K04620
|
Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
竺沙 知章 京都教育大学, 大学院連合教職実践研究科, 教授 (60243341)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 学校予算の現状と課題 / 学校における予算編成の方式 / 教員と事務職員との連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度実施した政令指定都市小中学校に対するアンケート調査の分析と政令指定都市小中学校への訪問による聞き取り調査を行い、実態の把握、事務職員の認識の把握に努めた。アンケート調査の分析と聞き取り調査に基づき、学校予算の現状と課題に関する検討を進めた。その結果、以下のような知見を得ることができた。 第一に、教育委員会から学校への予算配当に関して、配当基準がすべての学校の実態に合っているわけではなく、学校の実態とのズレがみられること。特に政令市によって学校への配当基準が大きく異なっている実態も明らかになり、検討すべき課題であることを具体的に把握することができた。第二に、各学校において、学校予算をめぐる協議があまり行われていないという実態があり、教員個人や教科や学年からの要求を基に調整するという編成方式を採用しているところが非常に多く、したがって、教育課程との関連や学校の教育目標との関連などを意識した協議があまり行われていないこと。第三に、学校予算に関わって、教員と事務職員との連携があまり活発ではなく、認識のズレがみられること。 以上のような実態は、学校予算の適切性を検討するうえで、大きな課題となりうると考えられる。学校予算の適切性は、学校関係者による協議を通じて判断される必要があり、その機会が十分ではないことをアンケートの結果及び学校事務職員に対する聞き取り調査によって把握することができた。また学校予算に関わって「ズレ」が見出され、そのことにしっかり向き合うことが必要であることもわかってきた。このように研究の目的である学校予算の適切性を検証するにあたって、検討すべき課題について明確にすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
政令指定都市のうち11の市を訪問し、学校事務職員、教育委員会事務局職員に聞き取り調査を行い、学校予算に関わる実態について把握、分析することができた。昨年度実施したアンケート調査の分析をさらに深め、聞き取り調査の実態を踏まえて、学校予算の現状と課題についてじっくりと検討することができた。特に学校予算と教育課程との関連について、多くの事務職員と意見交換を行い、そのあり方について認識を深めることができた点が大きな成果であった。その成果の一部を日本教育行政学会第53回大会で発表し、多くの会員から評価を受けることもできた。まだ訪問できていない政令市が少なくないことから、計画通りではないが、成果は十分に上げることができており、順調に進展していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、未訪問の政令指定都市を訪問し、学校事務職員から聞き取りを行い、学校予算に関する実態把握に努め、さらなる情報収集を進めていく。第二に、学校内部で学校予算をめぐってどのような協議が行われ、どのようなプロセスがあるのか、その実態を協力を得られる政令市を対象に、実態把握に努めていく。具体的には、調査票を作成し、学校予算に関するプロセスの情報収集を行うとともに、教員と事務職員に対して聞き取り調査を行い、学校予算をめぐる協議の実態の分析を進めていく。第三に、アメリカでの学校予算の適切性に関する文献調査を踏まえて、適切性をめぐる議論、その費用の算定のあり方について理論的な整理を完成させる。その知見を参照しながら、また政令市での学校予算めぐる協議のプロセスのデータを基にして、最終的に、学校予算の適切性の検証のあり方について、その方策を提案するなど問題提起を行う。学校予算の適切性を検証する際に、どのような協議が必要か、その視点を明確にすることを目標として、研究を進めていく。
|
Causes of Carryover |
2018年度において、政令指定都市の小中学校を訪問し、聞き取り調査をする計画を立てていたが、時間の関係で、予定していた政令指定都市すべてを訪問することができなかった。したがって、次年度に訪問することを予定しており、その旅費として使用する計画である。
|