2018 Fiscal Year Research-status Report
地域と伴走して教育文化運動へつないだ戦後移動図書館活動の実証的研究
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17K04640
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
石川 敬史 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (90634270)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移動図書館 / 自動車図書館 / 巡回文庫 / 貸出文庫 / 自動車文庫 / 図書館史 / 移動公民館 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,前年度に各種機関にて実施した資料収集を踏まえて,収集した資料を整理・読み込み,分析・考察・研究発表を行った。具体的には,第一に,図書館活動を内包した1950年代における都道府県の移動公民館を対象に,兵庫県(1951年開始)と富山県(1950年開始)の事例を分析・考察した。両県の移動公民館は,ナトコ映写機の巡回を媒介に戦前期からの巡回文庫(貸出文庫)を引き継ぎ,公民館や総合文化会館の拡充に伴いながら成立した。当初は移動図書館として企図されたが,しだいに公民館としての役割が強調されるようになった。しかし,開架書架を装備した移動公民館には図書館としての機能が内包され続け,過度な期待と多様な機能を背負いながら巡回を重ねるうちにその性格が曖昧になったことがわかった。これらの研究成果は『図書館文化史研究』(2019年9月刊行)に掲載される予定である。 第二に,旧・八幡市(現・北九州市)における「自動車文庫」,「移動児童館」,八幡製鉄所図書館による「自動車文庫」の調査である。前年度も含め,これまでに北九州市立八幡図書館,北九州市立文書館をはじめ,九州国際大学図書館,法政大学大原社会問題研究所,日本図書館協会などの機関にて資料収集を重ねた。資料分析としての中間的な報告は,「図書館活動の拡張に関する実証的検討:戦後八幡市における移動図書館と移動児童館を中心に」と題して,第65回日本社会教育学会研究大会(2018年10月6日)に口頭発表を行った。農山村部とは異なり,1950年代後半に人口30万人に達し都市化が進んだ旧・八幡市を対象に,地域において図書館活動をどのように受容し,さまざまな地域活動へどのように結びついていったのかなど分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に収集した資料にもとづき,兵庫県と富山県の教育委員会による「移動公民館」については研究成果として整理することができた。同時に,旧・八幡市における図書館拡張の活動についても,中間報告をすることができた。 一方で,当初の研究計画に記載した平成30年度の計画である高知市民図書館における農業文庫(生活と生業に密着した移動図書館活動の調査)については未着手の状態である。ただし,平成30年度には,これまでに調査を積み重ねた高知県立図書館における「自動車文庫」の成立について,論文として投稿し,研究成果として取りまとめることができた(『図書館界』2019年1月)。 以上のことから,本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
旧・八幡市における図書館拡張(八幡市と八幡製鉄所の自動車文庫)については,当時・図書館員であった方に,残された資料や研究視角について研究上のアドバイスをいただく。とりわけ,一次資料を十分に所蔵していない機関も多いことから,調査先への事前の問い合わせや,研究代表者による図書館関係者とのつながりを活かして,保存されているであろう未整理資料の問い合わせなどを持続していく予定である。
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Causes of Carryover |
3月末に資料収集・調査として,旅費や複写料金を支出している。また,旅費については安価に抑えることができたので,本年度は古書購入や旅費に充当する。
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Remarks |
連載エッセイの中にて,科研費の成果である移動公民館や移動児童館に触れている。
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