2018 Fiscal Year Research-status Report
参与観察による合併自治体における地域連帯意識醸成と社会教育の役割に関する研究
Project/Area Number |
17K04651
|
Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
内山 淳子 佛教大学, 教育学部, 准教授 (90648081)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 社会教育 / 地域づくり / 官民連携 / 交流 / 生涯学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、官民連携による地域づくりが求められる今日において住民の参画と協働はどのように進展していくのか、社会教育行政(生涯学習振興行政)による支援の方策を中心に検討するものである。 本年度は2017年度に開始された伊賀市教育委員会生涯学習課主催「地域における学びの交流会事業」(以下「学びの交流会」)が継続し、引き続きコーディネーターおよび進行役を担った。8月の公民館職員勉強会、9月から全5回の「学びの交流会」では市民による意見交換や実践発表を企画実施した。また、生涯学習課とともに参加市民にむけて地域活動情報収集を呼び掛け、年度末に地区別活動集録を作成した。2019年2月の第5回交流会では「住民による地域づくり」「交流会の効果」に関する質問紙調査を行った。 上記の「学びの交流会」実施等から得られた点は以下である。①伊賀市は2004年に6市町が合併した自治体であるために、2018年度現在も社会教育組織には差異がみられた。各地区の施設活用方法を含め、さらに全市官民での意思の疎通を図ることが重要と考えられる。②交流会参加者からは日ごろ話をすることのない遠方の地区との交流を評価する声が多く、お互いの活動が刺激となっていた。交流会での談話をきっかけとして地域住民による「ふるさとカルタ」を作成した地区もあり、当該地区ではカルタ作成を通じた連帯と活気がみられた。各地域リーダーの地域貢献が目立った。③合併後の住民自治活動は「伊賀市自治基本条例」に基づき一般部局を中心として推進されている。これまで各地区で役割を果たしてきた公民館・社会教育の在り方が問われている。④今後の課題は住民地域リーダーの育成と地域活動に関心を持つ人のすそ野を拡げる方策であり、これらのリーダーシップを執る行政間の連携が重要であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、2017年度に引き続いて当該自治体および参加市民の理解と協力が得られ「地域づくりのための交流会」を年間実施した。計10回を超える連続講座となったため、参加者は顔見知りになり、地域リーダー同士の実践や苦労話がお互いの活動を刺激し合う効果がみられた。このような場が求められているのは確かであるが、新たな担い手市民の開拓が課題である。 さらに2018年度末には、2017年度中に懸案であった「地域活動集録」を作成することができた。生涯学習課・社会教育主事および各地区公民館の協力を得て、伊賀市内38地区の活動情報を合併後初めて集約することになった。掲載内容は、①地区活動の中心となる施設(公民館・市民センター)の概要、②地区の年間活動概要、③文化・スポーツを中心としたサークル団体である。住民の手による要覧が今後のまちづくりに生かされるよう、次年度も継続していく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の課題は以下である。 ①2017年度から2年にわたり実施された伊賀市教育委員会生涯学習課「地域における学びのワークショップ(交流会)」の検証を行い還元する。期間中に行った質問紙調査、および今後の関係者ヒアリング等から、住民を中心とした地域づくりに対して社会教育行政・生涯学習推進行政・一般部局が果たす役割を考察する。 ②「学びの交流会」で培われた住民間のネットワークが今後どのように発展していくのかに注目して研究を継続する。 ③これまでの経緯から、地域づくり施策では一般部局・社会教育行政・市民の連携が重要と考えられた。この点に注目して研究を継続する。 ④合併自治体である伊賀市の社会教育制度の推移を整理し、他の合併自治体および合併を行わなかった自治体との比較をとおして今後の地域づくりの方策を検討する。
|
Causes of Carryover |
2018年度は主に伊賀市での実践研究に終始したため、予定していた他府県の社会教育および地域づくりの視察・研究等に着手することができなかった。
|