2021 Fiscal Year Research-status Report
参与観察による合併自治体における地域連帯意識醸成と社会教育の役割に関する研究
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17K04651
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
内山 淳子 佛教大学, 教育学部, 准教授 (90648081)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会教育 / 官民連携 / ネットワーク / 住民自治 / エンパワーメント / 生涯学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は官民連携による地域づくりが求められる今日、着実に住民の主体的な参画を支援していくことを問題意識とし、社会教育行政による支援の意義について検討するものである。とりわけ、平成の大合併を経験した自治体における社会教育行政の役割をテーマとし、市民のエンパワーメントのための有効な手段として、地域づくり実践者である市民のネットワーク構築を取り上げ検討している。 対象地伊賀市は筆者が2000年代から地域研究を継続してきた自治体であるが、新市を構成する6旧市町村では、公民館分館の有無、市民センター職員の人数の違い等の課題が存在していた。これまで、各地区の拠点意識を温存しつつ分館から市民センター(指定管理化)へと移行する自治体政策に対して市民の同意が得られにくく、施策実施段階での行政部署間の連携が課題になっていると思われた。本研究では教育委員会と連携し、市民リーダーの繋がりの形成を目的に2017-2018年度には「地域文化」をテーマとした市民交流会事業を企画・実施し、全38地区が執筆参加した『地域のデータ集録』を作成して地域情報を整理集約した。2019年度からは当該自治体での活動に参与して検証を行っている。本年度は新型コロナ感染症の影響を受けて出張が実施できず、対面での現地調査は困難であったが、継続して対象地から情報を収集した。行政組織の変化では、2020年度から各市民センターに「生涯学習推進員(支援員)」を置き、2022年度からは住民自治をソフト面で支援する体制づくりとして、生涯学習課に「社会教育指導員」の配置が予定されている。一方で分館廃止が決定した。2017年度迄に実施した交流会事業の参加者が各地で要職に就いており、今後の市民と行政との橋渡し役が期待される。他には同じく合併自治体である京都府南丹市、滋賀県愛荘町での地域づくりと社会教育の関連を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はコロナ感染症の影響を受けて他府県への移動が困難になり、現地調査は想定通りに進まなかったが、自治体関係者および研究協力者より情報を収集し、社会教育行政の動向を把握することができた。 その他の合併市の動向として、京都府南丹市では2006年の発足以降、旧4町(園部町・八木町・日吉町・美山町)ゆかりの文化財を展示する博物館事業を定期的に開催し、各地の誇りを尊重しつつ統合を推進する施策が続けられてきた。2006年に秦荘町・愛知川町が合併した滋賀県愛荘町では、「びんてまり」や特産の長芋、アーチェリーといった特色ある地域文化を図書館事業や地域学校協働活動を通じて子どもたちに伝えようとする状況が確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度となるため、これまでに行った調査研究を通して得られた資料、執筆した資料をまとめ、当該地域の地域づくりと社会教育行政(生涯学習振興行政)施策の変遷を、住民の参加状況と併せて記録することを計画している。さらに、2019年に作成した冊子『地域のデータ集録』の更新を進め、市民による地域づくり活動の活気醸成に役立つ資料を提供していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症拡大の影響を受け、年度を通して研究対象地への往復が困難になったことで旅費の執行が行われなかったため。
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