2018 Fiscal Year Research-status Report
History of introducing the kindergarten in the Jewish community of Venice:in Cannaregio
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17K04654
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
オムリ 慶子 関西学院大学, 教育学部, 教授 (20193823)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イタリア最初の公立幼稚園 / エーレナ・ラファロヴィッチ・コンパレッティ / ヴェネツィア市 / アドルフォ・ピック / 幼稚園導入初期 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヴェネツィア市立古文書館で収集した史料をもとに、イタリア最初の公立幼稚園(Il Giardino dell'Infanzia comunale)の設立の経緯を明らかにすることができた。史料は、幼稚園設立者であるユダヤ系ロシア人エーレナ・ラファロヴィッチ・コンパレッティ(Elena Raffalovich Comparetti,1842-1918)とヴェネツィア市との交渉記録、コンパレッティが市に寄付した金額とそれにまつわる契約書、ヴェネツィア市が契約を結んだ職人リストと報告書、幼稚園で使用するフレーベル恩物のドイツへの発注書や受取書、幼稚園開園式への招待客リスト、園庭への植樹の内容や予算等、1873年から1874年のおよそ300枚の史料を読み解くことによって、以下の項目の通り幼稚園設立の経緯を整理・再構成した。 ①カンナレージョ地区の幼稚園と女子師範学校の位置関係、②幼稚園開園までのコンパレッティとヴェネツィア市との交渉記録、③幼稚園の整備(1建物、2園庭、3教具・教材、4備品、5人材、6幼稚園のプログラム)、④幼稚園へのアドルフォ・ピックのかかわり、である。 再構成する中で明らかになったことは、a,ヴェネツィア市がヴィヴァンテ(ユダヤ系)邸に幼稚園を開設することを提案したこと、b,園児のための机やいすを製作する業者は入札で決められたこと、c,幼稚園の建物修復が未完成のまま幼稚園開園式を行ったこと、d,コンパレッティの実家からの寄付に夫の承認が必要だったこと、e,ヴェローナ女子師範学校校長コロミアッティにアドヴァイスを受けていたこと、f.フランジーニ邸の女子師範学校が幼稚園に近接していたこと、g.ヴェネツィア市は幼稚園より女子師範学校を重視していたこと、h.幼稚園の保育内容に名称練習や読み書きが行われていたこと、i.幼稚園は託児所や幼児学校と混同されていたこと、である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料は、期待していた内容のうち約90%を集めることができ、さらに資料の内容も研究を進めるのに十分なものであった。 これによって、イタリア初期幼稚園最初の公立幼稚園設立とその内容を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以上のことを踏まえて、世界初のゲットーを有するヴェネツィア・カンナレージョ地区において、複数の初期幼稚園設立にかかわったユダヤ人ネットワークについて明らかにしていきたいと考えている。 2019年2月~3月ウーディネ市立古文書館で、このネットワークの中心的な役割を果たしたと仮定しているアドルフォ・ピックにあてた書簡集(当時の教育相、フレーベル幼稚園に興味を持つ知識人たち、ユダヤ系幼稚園教師、マーレンホルツらの手紙)を収集することができたため、これらを分析し、ユダヤ人ネットワークが初期幼稚園をめぐってどのように機能していたかを明らかにしてていく。
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Causes of Carryover |
2月23日から3月15日まで行ったイタリア調査で、イタリア国内の移動費や書籍購入費に思ったより費用が掛からなかったため次年度使用額が生じた。 2019年度は、これらも含め、時間切れで収集できなかった残り約10%の古文書(1日に閲覧できる史料の数が古文書館によって3冊~5冊と決まっていたり、画像に収める量が決まっていたりなどの理由で)の調査・収集のための旅費、ネイティブによる古文書の書き起こしの費用に使用する予定である。
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