2017 Fiscal Year Research-status Report
生活困難を抱える親の学習主体形成に関する研究- 筑豊の地域実践より-
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17K04660
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Research Institution | Miyazaki International College |
Principal Investigator |
相戸 晴子 宮崎国際大学, 教育学部, 准教授 (20598122)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生活困難を抱えた親 / 地域参加 / 活動主体 / 学習主体 / 主体形成 / 生活体験 / 文化的生活 / 自立 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度平成29年度の研究で見えてきたのは、まず、生活困難を抱える親の多くが、一般的な親と比べて、活動に参加する意義を理解することや支援者や参加者同士が信頼関係を構築することに時間がかかるという傾向が見られることがわかった。しかし、継続して活動(調査)を行い、親の思いを語る機会を活動の随所に盛り込んでいくことによって、一定の時間と活動が経過すると、活動への積極的参加が見られたり、日常的にすぐ相談するなど依存的な関係を求めてきたり、知り合いを誘って活動に参加するなど、一般の親以上に活動に参加する意義理解と、支援者や参加者同士による深く強い関係が構築されている側面を確認することが出来た。また、自分の思いから次の活動が作られていく運営主体としての経験は、活動における自身の存在意義を実感し、かけがえのない活動になっている様子を態度や言葉から伺うことが出来た。 すなわち、生活困窮の親は一般的な親たちと比べて、学習主体に位置づくまでに時間がかかるものの、丁寧に活動主体、運営主体として位置づけ活動を展開していくことによって、より深い信頼関係を構築し、活動における自身の存在意義を見出し、仲間を誘い、活動を運営する主体として変容している姿(主体形成)をとらえることが出来た。 しかし、親の活動主体としての主体形成はとらえたものの、子どもを育てるうえでの価値観の変容については、1年目は詳しくとらえることが出来なかった。2年目以降の研究で子育て観の変容についてもあきらかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度平成29年度は、自治会や支援者の方々と「A団地子育てサロン」の活動に取り組み、本研究におけるアクションリサーチを毎月1回、年間10回、ほぼ計画通り行うことが出来た。そこでは、活動(調査)を実施し、動画や音声、画像による記録、研究者の観察記録、研究者と参加者の会話記録、活動終了後の支援者によるふりかえり、研究協力者との事例検討会(研究会)を実施し、データを蓄積することが出来た。 毎月1回の調査(活動)や研究会がほぼ計画通りに実行出来、研究計画に基づいた調査記録データを集め、生活困難を抱える親の学習主体形成の一旦をとらえることが出来始めていることから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究において生活困難を抱える親が学習主体として形成されていく過程が、一般的な親と共通する点もあれば異なる点も確認されてきたことから、残りの2年間の研究期間において、継続して調査、記録を続け、生活困難を抱える親の学習主体形成モデルの提示を目指して研究に取り組んでいきたい。 具体的には、先行研究で分析の枠組みをさらに熟考しつつ、月1回の調査(活動)を継続し、その活動記録や観察記録とともに、参加する親へのインタビューを定期的に行い学習主体としての変容プロセスをあきらかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
予定していた調査のうち2回が事業を主催する地域自治会の都合により中止せざるを得なかったため、2回分に相当する予算が残っている。次年度はその2回分の調査予算をもとに、追加調査を予定しており計画通り予算を執行する予定である。
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