2019 Fiscal Year Research-status Report
子ども・子育て新制度施行後のベビーホテルにおける保育内容と利用者についての研究
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17K04662
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen Junior College |
Principal Investigator |
大西 薫 岐阜聖徳学園大学短期大学部, その他部局等, 専任講師 (80616532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 将史 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成・院), 准教授 (20568498)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ベビーホテル / 認可外保育施設 / 小規模保育施設 |
Outline of Annual Research Achievements |
認可外保育施設は、認可保育所では対応できない保育ニーズに対応してきた歴史的背景があり、多様な雇用形態に柔軟に対応した保護者支援をおこなってきた。その一方で、保育施設における子どもの死亡事故は認可外保育施設や一時預かりで発生率が高く、保育の質が問題視されている。 子ども子育て新制度によって、認可外保育施設から小規模保育への移行が進められ認可外保育施設数・入所児童数はともに減少している。移行した施設長から語られたメリットは、職員の安定雇用が可能となり、日々の保育に専念できることであった。一方、デメリットとして、一時保育ができなくなったことに伴い、保育のやりがいは薄れたことが語られた。認可外保育施設の職員にとって、「今、必要」な保育に応じている(しかも、認可保育所ができない「保育」をしている)という実感は、保育者としてのやりがいにつながっていた。 彼らの保育は、時に自身の賃金が確保できない中でも、子どもと保護者を支援するという思いにつながっている。また、ニーズを持つ人々であれば誰でも支援するという基本的な哲学をもち、特に社会的弱者とされる親がもつECECのニーズへの支援を重視している特徴が明らかにされ、「自分たちはこの親子を見捨てない」という緊迫した状況の中で保育を実践している。当然、全ての認可外保育施設に当てはまる保育哲学ではないが、このような実践が取り上げられることも皆無に等しい。 日本のECEC施設の大多数である認可保育施設は、保育の本質である「ケア」を、保育を必要とするすべての人に届けることができているとはいいがたい。認可保育施設が国の基準を満たした施設であり続けるならば、様々な理由によってその基準から外れざるを得ない人々を無視するしかない。それができない一部の保育者たちによって、「ケアを、それを必要とする全ての人に届ける」という保育の創始者たちの理念が維持されてきたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに、ベビーホテルおよび認可外保育施設への参与観察、保育スタッフや施設職員への聞き取り調査を行った成果を発表し公表した。また、上位概念としての認可外保育施設においても同様の取り組みを行っており、今までの研究で得られた知見を、保育哲学の観点から分析し、職員の持つ保育観を明かにするとともに、日本の保育制度の矛盾を指摘し、論文として公表している。 継続して参与観察を行ってきたベビーホテルの開所形態が変わり、利用者へのインタビュー調査が目標人数に達していない。今後の社会状況も鑑み、インタビュー方法の修正や変更も加味しながら、ベビーホテル利用者の思いを抽出できる方法を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の保育制度の狭間としての認可外保育施設やベビーホテルを、子育て支援・就労支援と関連させながら、ECEC施設として保育の質を高めるための取り組みや、そこで行われている保育実践を明らかにする。また、それらの施設を利用せざるを得ない保護者の声を多く抽出し、保育行政に反映させるためにも、得られた知見をまとめ、研究発表していくとともに、論文として広く公表してく。
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Causes of Carryover |
計上してる謝金は、今後、利用者へのインタビュー調査が進む中で使用していく。 また、調査方法の修正・変更を計画したため、機材購入は来年度に行い、今までの研究成果をまとめていく。
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